学芸大学駅の西口前に第一ストアーがあります。記事執筆時はパンの田島 学芸大学駅前店がオープンしたばかりとあって、路上に行列ができるほどの賑わいです。
そんな喧騒なんてどこ吹く風とばかりに、淡々と40年以上も営業を続けている店(会社)が、同じ第一ストアー内にあるのをご存じでしょうか。
駅前すぐの階段を下り、手前から藤原商事、Bar Shelter、食べもの処 いちご、prism、グリルバー 暖談(だんだん)、松本商店と続いて、その先。
こちら側の階段を下れば、すぐ左手。
※時間や曜日によってはこちら側からしか行けないこともあります
第一ストアー地下の一番奥にある坂本製麺。1976年(?)創業の老舗製麺所です。
大量の麻布ラーメンの木箱に紛れて、今はなき恵比寿ラーメンの木箱。情報によると、赤坂ラーメン、九十九ラーメンなども坂本製麺なんだとか(現在がどうかは不明)。
そして忘れちゃいけない、学芸大学の二大街中華の内の一軒、東軒(あずまけん)も坂本製麺の麺を使っています。
お父さんの作業をしばし見学。ローラーで生地を伸ばしています。時折、スピードや生地のたゆみを調整しつつ。機械にかけて、はいできあがり、ってわけじゃないんだなぁ。キリのよさそうなところでガラス戸をノック。すると、扉を開けて下さいました。
「こちらは麺の小売りはして頂けないんですか?」
「大丈夫ですよ。どれくらい?」
「4玉分くらいなんですが……」
「4玉ね、ちょっとお待ち下さい」
そう言って、隣のブースへ。
おそらく閉業して10年は優に経っているであろう丸竹鳥肉専門店という看板のついた物件。ここに業務用冷蔵庫があり、麺が入っています。
「あ、もしあれば、できるだけ太い麺がいいんですけど……あります?」
「太めあったかなぁ……ああ、あった」
「おいくらでしょう」
「280円」
安っw
「こちらはどれくらいになるんですか?」
「40……40年と少しかな」
「すごっ。東軒にも麺を卸してらっしゃいますよね」
「ええ」
「いつもおいしく頂いてます」
「そうですか(笑) ありがとうございます」
「お釣り結構ですよ」
「いえいえ。そんな。はい、20円のお返し」
「ありがとうございます」
「ありがとうございます」
そりゃ本当は1時間くらいインタビューしたいさ。聞きたいことが100くらいある。けど、麺を打っている最中ですから、ささっとお暇することに。
こちらが買って来た麺。黄色が強めで中太。そして縮れています。袋を開けた瞬間、小麦のいい香りがしました。しっかし重いなw
まず最初に作るは、当然、肉ニララーメン 東軒オマージュ(1玉)。スープはカツオと鶏のダブル。豚こま、もやし、ニラをさっと炒めて、ほんの少し塩コショウ。
インスタント麺のように、スープと一緒に麺を茹でちゃだめですよ。打ち粉が溶け出てドロドロになっちゃいますから。茹で終えた麺は一度、サッとお湯で流すといいかもしれません。ぬめりが取れます。いずれにせよ、できるだけ多いお湯で茹でて下さい。
東軒の麺はもっと細い。スープはガッツリ。ぜんぜん違うし、比べるまでもなく、味も劣るのですが、でも、麺がブリッブリなのは東軒で食べるラーメンと同じ。小麦の風味もしっかりしてます。うまいよぉ。
で、なぜ太めの麺がほしかったかというと、前日に作った油かすで焼きそばを作りたかったから。
だーん! まずは塩焼きそば(1.6玉)。茹でた麺、キャベツ、もやし、油かすで、トッピングはカツオ節、ラー油。塩ダレは鶏ガラスープの素、ナンプラー、塩で作りました。
塩焼きそばにはナンプラーを入れるのがいい。これはキャベツ亭で学んだこと。いや、キャベツ亭の塩焼きそばにナンプラーが入ってるかどうかはわかりませんが、あれ、ナンプラーぽくておいしいんですよねぇ。
油かすのコクと香ばしさが、焼きそば全体を覆っています。プリップリの太麺がちょうどいい。うまーい。
焼きそばにする場合は、茹でた麺をまずはボールに入れ、少量の油でコーティング。それから少し焦げ目がつく程度にしっかり焼きつけるといいですよ(キツネ色になるまで麺は動かさない)。こうするとパサパサにもベチャベチャにもなりません。麺を焼きつけたら、あらかじめ焼いておいた具と混ぜ合わせます。
連れの晩御飯として普通のソースでも油かす焼きそばを作りました(1.4玉)。私も2、3口。やっぱりコシがすごい。うまっ。
「これ、東軒と同じ製麺所の麺なんだぜ」
「へぇ。モッチモチだね」
「駅前の第一ストアーの地下にあってね」
「ふーん」
「めっちゃうまくね?」
「うん、おいしいね」
ラーメン用のブリッブリの太麺です。味は濃い方がいい。塩よりソースの方が味的にはおいしかったです。ただ、実は油かすから始まってる話なので、油かす視点で言えば塩がいい。
別日に購入した麺。どうしたかというと。
やっぱりうまかった! 今回はブリブリというよりも、ポリポリっとした食感でした。博多豚骨ラーメンの麺のような感じのコシです。
最近ではスーパーでも焼きそば用の太い麺が売られています。それと比べて、坂本製麺の麺がどれだけ優れているかというと、もしかしたらそれほど違わないかもしれません。
でも、だけど。
坂本製麺のこの麺はめっちゃうまい。スーパーで売ってる普通の麺より断然うまい。矛盾している? ですよね。それでいいんです。
なぜこれほど坂本製麺の麺がおいしく感じられるかというと、坂本製麺が学芸大学の製麺所だから。そして私は学芸大学という街が好きだから。要は贔屓(ひいき)です。
大好きな東軒という店が使っている麺を、大好きな街・学芸大学の製麺所が作ってる。聞いてみたら、その製麺所では小売りをしてくれる。だから買いました。食べました。おいしく感じられました。
もし、あなたが学芸大学以外の地域に住んでいるなら、ぜひ近所の製麺所を探して行ってみて下さい。わざわざ、ここ坂本製麺にまで来る必要はありません。あなたにとっての特別な麺は、あなたのそばにあるはずです。
もし、あなたが学芸大学に住んでいるなら、ぜひ一度、坂本製麺の麺を食べてみて下さい。自分の街に有名店も利用している製麺所があって、そこで麺が買えるんですから。買うのに二の足を踏むなら、東軒でラーメンを食べるでもよし。
いいもんですよ。自分の街で作られ売られているものを食べるってのは。そしてもし、あなたが学芸大学という街を愛しているなら、坂本製麺の麺はスーパーで売られている麺よりもきっとおいしく感じられることでしょう。
そういうもんだと私は思うんですけどねー。
と書いておいてなんですが、いや、本当においしいからw ぜひ。
SHOP DATA
- 坂本製麺
- 東京都目黒区鷹番3-6−1 第一ストアーB1
- 03-3716-7380
- 公式