※追記:2019年9月7日、サンチノは米粉パン専門店・竹若ベーカリーにリニューアルしました。以下はすべてサンチノ時代の内容です。現在と状況が異なっているということをご了承下さい。追記以上
「サンチノ」のパンは楽しくておいしい
学芸大学駅、都立大学駅から徒歩10分強。目黒通り沿いにある、2016年12月18日にオープンしたイオンスタイル碑文谷(旧ダイエー碑文谷店)。
同店一階に「パン&コーヒー サンチノ(BREAD&COFFEE SANCHINO)」というパン屋があります。パン職人・杉窪章匡(すぎくぼあきまさ)氏がプロデュースするお店で、運営は(株)竹若(本社/築地)。そのあたりのことはまた後ほど。
バゲットやカンパーニュといったハード系、カレーパンやメロンパンのような惣菜系・菓子系、食パン、サンドウィッチなどなど、売り場面積はそれほど広くないのですが、種類が豊富にそろっています。中でもブリオッシュのような小ぶりなパンが特に目立ちます。
そして、もうひとつ目を引くのが各パンの名前です。クリームパンはミルクホール、チョコクロネはブラックホール、野球帽のような形のパンは野球帽とそのままw そして、「サンチノ」の小麦粉を全部ブレンドして作られているバゲットはホームランバゲット。「美味しさホームラン級」だそうw 名前や形を見ているだけでも楽しいです。
店内には椅子があるので、イートインも可能です。コーヒーやジュース類もあります。奥さん(or 旦那さん)が買い物をしている間、子供と一緒にここで待ってる、なんてこともできますねw
というわけで、買って来たのはこちら。
右から右回りでキャベーツ(100円)、チーズパーニュ(240円)、甘食パン(190円)。
甘食パンはモッチリでフワッ。ほんのり甘く、ほんのり塩味(えんみ)。キャベーツは炒めて甘くなったキャベツが入っているのですが、アンチョビ的な塩気もあります。チーズパーニュは堅め。パン自体には少し酸味があり、ナッツ?の香ばしさ、チーズの甘みが加わります。
一番良かったのはキャベーツ。甘みと塩味(えんみ)のバランスが素晴らしい。どれもおいしいのですが、特にこれが好きでした。
続いてホームランバゲット(240円)。バゲットの割には短めです。クープが面白いですね。普通は6、7本、斜めに入るのですが、このサイズですから、3、4本入っていてもおかしくない。けど、これは縦に一本入っている感じ。
皮はパリッとしていますが、中はモッチリ感が強めです。ちょっとバタールぽくも感じます。味わいは甘みが印象的でした。
こういう言い方がいいのかどうかわかりませんが、バゲットとバタールの中間のようなニュアンスです(バタール自体が「中間(パリジャンとバゲットの中間)」という意味なのですがw)。
最近よく思うのですが、こういうバゲットが多いですね。ガッチガチのバゲットが本格的とされ、パンマニアに好まれる一方、一般的な日本人にはこれくらいしっとりしていた方が食べやすいのかもしれません。
「サンチノ」は「産地の」「~さん家の」といった意味だそう。日本各地の食材をうまく利用しながら、"温故知新"、昔ながらの日本のパンのよさに今風のアレンジを利かせ、懐かしくも新しい味わいを提供しようというのがコンセプトなんだとか。
都立大学駅付近はさて置き、イオンスタイル碑文谷から徒歩10分圏内に、こういうタイプのパン屋ってありましたっけ? おそらくなかったような。この界隈に住んでる方には重宝ですね。
「サンチノ」/杉窪章匡氏の読み
さて、「サンチノ」のバックボーンについてです。
前述の通り、「サンチノ」をプロデュースしているのはパン職人・杉窪章匡氏。パティシエ、シェフとしてフランスのレストランで修業していた経験があり、2013年10月、ウルトラキッチン株式会社を設立し、同年12月、富ヶ谷/代々木公園に「365日」というパン屋を開業します。「365日」はオープン前から、今までにないパン屋ができると噂になっていて、現在でも大人気のお店です。
2016年3月、「365日」のすぐそばに「15℃」というカフェを開業。こちらも人気店。この2つがウルトラキッチン(株)の直営店です。
杉窪章匡氏は職人でもあり、経営者でもあるのですが、もうひとつ、プロデューサーとしての顔も持っています。「テーラ・テール(terre à terre)」(名古屋市)、「ブルージャム(BLUE JAM)」(福岡市)、「セテュヌボンニデー(C'EST UNE BONNE IDÉE)」(登戸)といったお店をプロデュースし、そして昨年、「サンチノ」もプロデュースします。
杉窪章匡氏はまさに、職人でありながら、経営者・プロデューサーもこなすプレイング・マネージャーと言えるでしょう。飲食業界にはこういう天才的な人がチラホラいますよね。学芸大学でいつもよく感じるのが、「リ・カーリカ」((株)タバッキ)の堤亮輔さん。すごいよなぁ。
最初、ホームランバゲットという札を見た時、「ホームランバゲットってw」と思いましたよ。正直。けど、改めて考えてみると、いやはや、すごいなぁと思わされるんです。
このブログを読んでいる方なら、イオンスタイル碑文谷に行ったことのある方も多いと思うんです。どうでしたか? イオンスタイル碑文谷は。もちろん、時間や曜日によっても違うでしょうが、家族連れ、子供がたくさんいませんでしたか?
「ほら、ホームランだって」(お母さん)
「ホームランだー!」(子供)
「へぇ、ホームランかw」(お父さん)
「買って―」(子供)
「じゃ、買ってみようか」(お父さん)
こんな会話をしている家族もいっぱいいるはず。当然、そういうことを予測して、杉窪章匡氏は商品開発をし、パンに名前をつけています。
それぞれが自分のことだけでなく、自分の周りにいる誰かのことを考えること。そして自分が知らない誰かのことを知ろうとすること。そんな少しのことで世界は変わることを僕たちは知っているから。
イオンから杉窪章匡氏に話が行った時にすでに、杉窪章匡氏はどういうお客さんが来るか、どういうパンがここでは求められるかということを読み切っていました。その想像力、そしてそれをどう具現化するかというアイデア。これがすごいんだよなぁ。
ホームランバゲットをオリーブオイルに浸して口にします。ふむ、これなら子供でもおばあちゃんでも食べやすいはず。けったいな名前だけど、よく考えられてるなぁと感心してしまうのでした。