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Cafe & Bar Blue Reef/ブルーリーフ(学芸大学)のジントニックはオリジナリティ溢れる逸品。シックで落ちつく雰囲気ですが、堅くなくてくつろげます。緊張感を抱かせないってのがいいバーテンダーなんだなぁ。

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学芸大学駅から徒歩5分。東口商店街を抜けて都道420号(バス通り)とぶつかる交差点にあるCafe & Bar Blue Reef(ブルーリーフ)。学大随一との評判を何かにつけ、いたるところで聞き及びます。

まだ行ったことがありませんでした。行こうとは思っていたのですが、ここに限らず、最近、新しいバーに行くのが少々億劫で。けど、それじゃあいかん。重い腰を上げて白い扉を開けました。

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カウンター12席で奥には半個室のテーブル席が2席あるようです。

バーテンダーの角井正朋さんはウェスティンホテル東京(恵比寿)などで12年勤務したのち、2012年7月2日、この地に自身のバーを開店させました。

うかがったのは20時半ごろだったでしょうか。女性が先客で一人いらっしゃいました。特にメニューはありません。いや、もしかしたらあるかも? 必要であれば聞いてみて下さい。

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最初にチャームとして出されました。フルーツのハチミツ漬け。振りかけられているのはシナモンでしょう。フレッシュで甘くてほんのりスパイシー。うまっ。

各席のカウンター上にはちょうどダウンライトが落ちています。いいバーはこうするんだよね。カウンター内じゃなくてカウンターの上こそがステージなんだな。

一杯目はジントニックをお願いしました。定点観測。

うん、この席はよかれあしかれだったなw 店内全体を見回せるという意味でここを選んだのですが、バックバーやバーテンダーの手元を見るなら正面が正解。ま、しゃーない。

つぶさには見えませんでしたが、背筋をピンと立て、最初にライムを絞り入れる様子はわかりました。そして最後に見たことのない瓶でワンダッシュ。はて。

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わぉ。シャレた細いコリンズグラスで出てくるのかと思いきや、太めのタンブラー。そしてライムに加えてオレンジ。見た目だけでここまでうまそうに感じさせるジントニック。いいねぇ。とてもいい。

バーで飲む酒、カクテルは単に酒を混ぜるだけじゃない。そんなことは百も承知なのですが、こういうカクテルを見せつけられると、その思いが一段と強くなります。

まずひと口。ふぉ。オレンジの甘み。そしてかすかにほろ苦。こりゃすごい。激うま。

「すみません、最後に何かを加えましたよね。あれはなんですか?」

細長いお酒の瓶と、茶褐色の小さな丸い瓶を見せてくれました。

「オレンジビターズなんですが、それにクローブを漬けてるんです。ジンは薬草の蒸留酒ですから、そこにひとつ加えてオリジナリティを出そうと」

クローブか。言われても味的にはわからないけど、きっと全体を引き締めているんだろうな。オリジナルビターズがなければ、もしかしたらジントニックとしてはまろやかになりすぎているのかも。

「甘めでおいしいですね。好きな味です」

「ありがとうございます。暑い季節だとキリッとさせたり、場合によってはソニックにしたりもいいんですけどね」

バーテンダーさんと先客の常連さんとのやり取りをBGMに店内を見回します。

暗めでシックな雰囲気の店内ですが、入口と奥にサーフボードがそれぞれ1枚。壁には海の絵。暗いし端だしバックバーは見えづらいのですが、スコッチは結構ありそう。トロワ・リビエール(Trois Rivieres)があるな。その隣はなんだろう。お、ブラントンの馬がいっぱいあるぞ。もしかしたら全部揃ってるのかな。うーん、二杯目はやっぱスコッチだろうな。けどラムもなぁ。

いいバーはその場にいるだけで、バックバーを眺めているだけで楽しい。

時折、バーテンダーさんはこちらに寄って来て話しかけてくれます。

「このあたりにお住まいですか?」

「はい」

「このあたりではよくお飲みになるんですか?」

「ええ、そうですね」

「今日は何軒目ですか?」

「二軒目です」

「それにしても今日は寒いですね」

「そうですねぇ」

無愛想な返事をしてんな俺。でも、ほんの少しの故意を交えてそう答えました。常連さんとバーテンダーさんの会話の流れを見ていて、今はお邪魔しないほうがいいかなと。まだ話を広げる段階じゃない。

ジントニックが残りあとふた口分ほどとなりました。二杯目はスコッチにするか。

「すみません、スコッチをお願いしたいのですが」

「どういうタイプがお好みですか?」

「何でも好きです。お手頃な価格で何かオススメがありましたら」

「そうですねぇ」

あえてこう注文しました。まず、シングルモルトではなくスコッチと幅を広めました。最近はブレンデッドもよく飲むので。そして好みを伝えません。これを言うと、そればっかになっちゃうんですよねぇ。私は島モノが好きですが、そう言うと出されるものがだいたい決まってきちゃう。これじゃあ面白くないので、好みを伝えず適当に選んでもらうようにしています。

ボトルを目の前に並べてくれました。

「たとえばバルヴェニー(BALVENIE)、あとエドラダワー(EDRADOUR)、それと……」

この2本に対する私の反応が芳しくなかったので、もう一本選んでくれました。ちなみに両方とも大好きです。自分でボトルを購入したこともあります。だから「うーん」という表情になっちゃいました。せっかくだし、飲んだことのないものがいい。

「これはどうでしょう。キルホーマン(KILCHOMAN)というアイラなんですが、比較的最近できた蒸留所で。結構しっかりしてますよ」

「へぇ。これは初めて見ました。おいくらでしょう」

「1500円です」

「じゃ、これでお願いします」

「飲み方はどういたしましょうか」

「ストレートで」

結局、アイラになっちゃったw

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まずはそのまま香りをかぎ、次にテイスティンググラスを回して香りをかぎます。スモーキーですが甘さもある。けど、丸いというより鋭さを感じさせます。

ひと口。おおう。ピートもしっかりしていますが、とてもソルティに感じます。いや、これは直前に甘いフルーツとカクテルを飲んだからか? 一応、水で口はゆすいだんだけどな。

ふた口。うん、鼻に抜けて行く香りには華やかさも感じるなぁ。ヘビーとまでは感じない。けど、確かにしっかりはしている。そして、モルトでこういう言い方をするのかどうか知りませんが、フレッシュな印象を受けます。

やっぱ一杯目とのギャップが大きすぎたか?w ビールのあとに飲んでいたら、またぜんぜん違って感じるかもなぁ。

この頃に先客がお帰りになりました。ペコッと頭をお下げになります。私も軽くペコリ。客は私一人になりました。スッと私の方へ寄って来るバーテンダーさん。

ビシッと頭を固め、ベストにネクタイ。穏やかで落ちついた口調。たぶん、俺より少し年下くらいだと思うんだけどなぁ。

先ほどはお客さんがいたので遠慮していましたが、今はもう一人。何でも話せるな。ひひひ。

「おいしいですね」

「普段はどういうのを飲まれますか?」

「本当は島モノが好きなんですが、そればっかりになっちゃうから、最近はできるだけいろいろ飲むようにしてますね」

「私も同じです。一時、アイラが好きでそればっかりになってしまって」

「裏(キルホーマンの瓶の裏)に2005年設立って書かれてますね。ここに限らず、たまに蒸留所ができるじゃないですか。あれって不思議なんですけど、蒸留してすぐには製品はできませんよね。少なくとも数年はかかる。その間、どうしてるんだろうと」

「確かにそうですね。『マッサン』の場合はリンゴジュースを作ってしのいだらしいです。だから大日本果汁でニッカと」

「あー、そうなんですか」

「ポットスチルは1基で数千万円するそうですから、作るのにもお金はかかりますしね」

「えええ、そんなに。ポットスチルと言えば、エドラダワーって何基あるんですかね」

エドラダワーというスコッチを作っているエドラダワー蒸留所にあるポットスチル(蒸留器)はスコットランドでもっとも小さいポットスチルとして有名なんです(大きさには法律的な制限があって、下限ギリギリの大きさ)。大きさのことは知っていますが、さて、何基あるんだろうと、ふと疑問に思った次第。

「ええと……(書籍を見ながら)2基だそうです」

「それも不思議ですよねぇ。だって、それだけ小さくて少ないなら、生産量も少ないはず。なのにエドラダワーって別に高くはないじゃないですか。それで儲かるのかと(笑)」

……この感じ。久しぶり。バーテンダーを独占してのスコッチ談議。勉強になるし楽しいなぁ。あ、思い出した。

「そう言えば一番最近飲んだウィスキーはイチローズモルトです。ブレンデッドのバージョンがあって、初めて見たんで飲んだら、これがなかなか。プレミアワンっていうバーにあったんですが」

「プレミアワンは私も何度か店のあとに行ったことがあります。4時、5時くらいだったと思うんですが、行ったら……」

「すごかったんじゃないですか?w」

「ええ、すごい賑わいでしたw 早い時間だと静かなんですか?」

「そうですね。日が変わるまでは比較的静かで、2時、3時ごろから賑わってきますね」

「うちも遅いですねぇ。それくらいの時間だとだいたいお客様はいらっしゃいます」

「学大は遅いですねぇ」

気になっていたこいつを聞いてみよ。

「そのブラントンはそれで全種類ですか? 全部で何種類あるんだろう」

「ここには9個ですね。ひとつかぶってて、全部で8種類です。DISARONNOのアマレットのキャップにちょうど乗るんで、こうやって飾ってます。店をやっていても、なかなか揃わなくて」

ブラントン(Blanton's)というバーボンのキャップには小さな馬のフィギュアのようなものがついていて、これが全部で8種類あります。馬の姿がそれぞれ違っています。

「小売店を回ってかぶらないように買って行くってのも手なのかもしれないけど、そもそもブラントンを置いているところはそう多くないだろうしなぁ」

「酒屋さんにお願して違うものを毎回持ってきてもらうってことも、できなくはないですけど」

「酒屋面倒ですねw」

「そんなことしても酒屋さんになんのメリットもないですよねw」

しっかりしてはいますが、決して堅い感じじゃない。フレンドリーとフランクをはき違えない。一線を引きつつも過度に緊張を強いない。ぬぬぅ。プロだ。これが本当のいいバーテンダーだ。

「サーフィンが好きだから『Blue Reef』なんですか? サーフボードもあるし……」

「それもあるんですが、カクテル名からつけました。サーフィンはかじる程度ですね。横須賀出身で小さい頃から近くに海があったもので」

飲み干したグラスに鼻を入れ残った香りを楽しみます。ああ、そうか。途中で加水しときゃよかったなぁ。失敗失敗w けど、めっちゃうまかったからよし。

もう一杯頂きたいところをグッとこらえてお会計をお願いしました。すると。

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「こちらコンソメスープです。熱いのでお気を付け下さい」

なんだかなぁ。どこまで。

「ごちそうさまでした」

「ありがとうございました。またお越し下さい」

ドアのところまでお見送りして頂きました。

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東口商店街を学芸大学駅方面へと向かいます。うん、やっぱバーっていいな。わがままの言える気楽なところに行ってしまいがちだけど、知らない店に行って、ゼロから会話を積み上げ、徐々に店の空気に馴染んでいくってのも悪くない。

フレッシュフルーツのカクテルがあったりもしますし、バーテンダーさんは優しいし、女性でも行きやすいと思います。結局、バーは合うかどうか。こんなの読んだって参考になりゃしません。その足で行ってみて下さい。男も女も、付き合ってみないとわからんことってあるじゃん? そゆことw

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125年ぶりにアイラ島に誕生したキルホーマン蒸留所

その場でも少し話題になったのですが、キルホーマンについて少し。

キルホーマン蒸留所はアンソニー・ウィルズ(ANTHONY WILLS)によって2005年に設立されました。アイラ島では125年ぶりにできた蒸留所。

アンソニーはボトリング会社をやっていたんですね。で、自分でもオリジナルのシングルモルトを作ろうと同蒸留所を設立したそうです。キルホーマンのボトルの右側には「ANTHONY WILLS」という手書きのサインがあります。

ボトルの左側には「John MacLellan」というサインがあります。その場では「Machallan」に見えて、「まさかあのマッカランじゃないですよね」「いやスペルが違いますね」みたいなやり取りになったのですが(スコッチのマッカランはMacallan)、このジョン・マクレランさんはキルホーマン蒸留所の部長的立ち場の方でした。

マクラレンさんはブナハーブンでキャリアを開始して、2010年にキルホーマンへやって来ました。そして2016年3月27日、ガンで亡くなったそうです。

目の前にあるこの「キルホーマン サナイグ(SANAIG)」は4年~5年熟成のバーボン樽原酒50%とオロロソ・シェリー樽原酒50%を組み合わせて造られたそう。と、わかった上で思い返してみます。……うん、わかんねw 機会があればもう一度飲んで確かめてみよう。

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追記。別のバーで飲んだKILCHOMAN(キルホーマン)のMACHIR BAY(マキヤーベイ)。バーボン:オロロソが8:2。こちらは打って変わって超ピート。超骨太。ガッツリ。最近飲んだ中で一番素晴らしかったです。もしどこかで見かけましたらぜひ。アイラ好きなら絶対おいしいと思ってもらえるはず。

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