昼は定食、夜は居酒屋のぼうず食堂
学芸大学駅から徒歩10分。西口を出て線路沿いを都立大学方面へ向かい、碑文谷公園を越えた先に、ぼうず食堂という和牛すじ煮込みのお店があります。2020年9月4日にオープンしました。
ご主人の角田喜行さんはそれまで経営していたクリーニング店・角田ランドリーを閉め、飲食店をやるという長年の夢を叶えるべく、ぼうず食堂をオープンさせました。
余談ですが、学芸大学といえば"角田(つのだ)"です。学芸大学には角田さんがいっぱい。ただ、すべてが血縁関係にあるというわけではありません。角田喜行さんは角田光五郎の流れだそう。
※ぼうす食堂への詳しい行き方は記事末をご参照ください
カウンター10席ほど。厨房と対面しているのは内6席。カウンターは奥多摩産ヒノキの一枚板。とても立派です。
昼は基本的に和牛すじ煮込み定食としょうが焼き定食の2種(いずれも1000円)。月イチで牛すじカレーも。
夜は居酒屋になります。アラカルトもあるのでしょうけど、おまかせセット(2500円。一杯サービス)、チョイ飲みセット(1000円)がメイン。ご主人お手製のおつまみが少量ずつ何品も出てくるのだとか。事前に予約をすれば生もの(刺身)も用意できるそう。詳しくは聞いてみて下さい。
お酒は東京の日本酒にこだわっているようです(写真はいずれもtwitter@bouzu_syokudoより)。
カウンター上には一味と根元 八幡屋礒五郎の七味・七味ごまが据えられています。
ぼうず食堂のホロホロ、トロトロな和牛すじ煮込み
和牛すじ煮込み定食(ご飯大盛り)がやってきました。キャベツサラダとキムチ・たくわん・キャベツの浅漬けなどのお新香がいっぱい。賑やか。
写真ではわかりづらいかもしれませんが、大きめの器にたっぷりと和牛すじ煮込みがよそわれています。迫力がある。ボリューミーです。
牛すじ、ショウガ、大根、ごぼう、こんにゃくが入っています。牛すじもいっぱい。
まずは牛すじをひと口。大ぶりですが、噛み切るより前に肉がホロホロっと崩れます。しっとりプルンプルンなすじ、トロトロに溶けていくすじ・脂……いろいろな組織が入り混じっているので、味わいも食感もバラエティーに富んでいます。
味付けはショウガのきいた甘い味噌風味。甘くする調味料(砂糖など)も使っているでしょうけど、肉・すじ・野菜由来の甘さもしっかりと感じます。
ごぼうの滋味、たっぷりと汁を吸ったとろける大根、肉・すじの甘み、ショウガの清涼感、これらがギュッと一皿に凝縮されていて、まったり濃厚。
※牛すじってなんだ?という話は後ほど詳しく
和牛すじ煮込みを半分ほど食べたところで一味を多めに投入。和牛すじ煮込みが甘めなので。まったりな和牛すじ煮込みがピリッと引き締まり、これもまたいい。
途中でやって来たご年配の一見さんとご主人の会話によると、何度も煮こぼして脂を落としているそう。確かに脂のプルプルも感じますが、脂っこさは一切ありません。
味噌汁はいるかどうかを聞かれます。和牛すじ煮込みが味噌味なので聞くようにしているそう。
濃いめの味付けなので、ご飯が進みます。お新香もいっぱいですから、ご飯大盛りにしたのに、ご飯とおかず類のペースが合わないw
食べ終えるとお腹いっぱいになりました。おいしかったし、ボリューム的にも大満足。いやぁ、うまかった。いい定食だなぁ。
「お勘定をお願いします」
「いかがでしたか?」
それはそれは心配そうな面持ちで尋ねるご主人。
「おいしかったですよ」
笑顔でそう答えたのですが、ご主人の顔は晴れません。なるほど。
もちろん「おいしい」という言葉は嬉しいのでしょうけど、今はそれよりもほしい言葉がある。どんな細かなことでもいい。とにかく気になったことを何でも正直に言ってほしい。そんな気持ちなんだろうな。
「どうしてすじ煮込みの店にしたんですか?」
「そもそもすじ煮込みを作るのが好きだったんです。お肉屋さんの社長さんが知り合いにいて、和牛のすじだけを卸してもらえるということも大きかったです。最近はしょうが焼きのほうが人気なんですけどね(笑) 八方美人になって、いろいろやっても夜の仕込みができませんし、この形でやっていこうかと思ってます」
この界隈は飲食店がほとんどありません。また、駅から遠いので、客は近所の方が多くなるはず。だったら定食も居酒屋メニューもいろいろあったほうが頻繁に来てもらいやすくなる、と考えることもできるでしょう。
けど、まだオープンして2ヶ月。念願かなって開いた店。しかも、自宅兼店舗でしょうから、物件を借りている飲食店よりも余裕がある。当面は無理せず、できる範囲で、自身の想い・こだわりを最優先に考えて好きなようにやり、もし万が一、それで立ち行かなかったら、その時にあれこれ考えればいいわけで。そういう意味では、現段階でのご主人の方針はこれはこれでありだと思います。
「ごちそうさまでした」
「今週は木曜日に月イチのすじカレーがあるんです。土曜日まであるかな……。もしよければぜひお越しください」
「ありがとうございます(笑)」
朗らかで気さくなご主人でした。夜、談笑しながら、酒と肴で晩酌というのも楽しいでしょうね。
少し遠いかもしれませんが、自転車ならすぐでしょう。ランチはお腹いっぱいになりますから、食後のいい散歩にもなりそう?w ちょいとのぞいてみてはいかがでしょうか。
牛すじってなんだ?
一般的にすじとはすじばった"肉"のことを指します。具体的に何がすじ/すじ肉と呼ばれているかというと、アキレス腱、横隔膜いわゆるハラミの膜(メンブレン)、肉と肉の間にある筋膜などです(肉は膜で覆われている)。
これらのほとんどは硬かったり、グニョグニョしていたりして、そのままでは食べづらく、多くは長時間煮込むことで柔らかくされ、食用に供されます。そのひとつが牛すじ煮込みです。
さて、おでんでよく見かける串に刺さった牛すじはアキレス腱やメンブレンであることが多いかもしれません。
ぼうず食堂のすじは肉と肉の間の筋膜/すじがメインです。上の和牛すじ煮込みのアップ写真をご覧ください。写真右下の"すじ"は繊維が横向けに入っていますよね。これは肉の繊維です。この裏側に筋膜=すじがくっついています。
同じ写真の中央の"すじ"がわかりやすいかもしれません。右上に三角形の肉があり、その下にコラーゲン状のすじがついています。脂もついてるかな。
※簡略化して書いています
なぜこうなるかというと、肉解体業者もしくは精肉店が肉を切り分けたりトリミングする際、削ぎ落そうとするすじや脂に肉が一緒についてくるからです(肉とはいえ、筋膜とつながっている部分なので、硬かったりすることもあり、あえて多くそぎ落とすこともある)。
栄屋精肉店の牛すじも肉がついたすじです。牛すじを買う際、お父さんはいつもこうおっしゃいます。
「ウチの牛すじは和牛。すじなんてほとんどないよ」
牛すじなのに「すじなんてない」。変な風に聞こえるかもしれませんが、決して矛盾したことを言ってるわけではありません。肉がたっぷりついたお得なすじだよ、という意味なんですねー。
ぼうず食堂への行き方
ぼうず食堂は駅から遠い住宅街にあるのですが、この界隈にお住まいであれば、場所はわかりやすいはずです。
学芸大学駅から
改札を背に左手・西口を出てすぐ左。線路沿いをひたすらまっすぐ行き、碑文谷公園も越えます。
そしてこの十字路を右に曲がれば、すぐそこにぼうず食堂があります。
イオンスタイル碑文谷を基点に
イオンスタイル碑文谷の前のこの道をまっすぐ行けば、道沿いにぼうず食堂があります。ぼうず食堂を越えてまっすぐ行くと、環七の柿の木坂一丁目交差点です。
環七・柿の木坂一丁目交差点を基点に
環七・柿の木坂一丁目交差点から見た図。この道沿いにぼうず食堂があるわけですが、そのまままっすぐ行けば、イオンスタイル碑文谷に着きます。
碑文谷公園・ポニー園を基点に
碑文谷公園の北西出口の対面にポニー園があります。この写真はポニー園を背に碑文谷公園方面を見ています。特にお子さんがいらっしゃれば、見慣れた光景かと。この道を奥へまっすぐ行けば、突き当りのT字路にぼうず食堂があります。