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山静/やませい(西小山)はお父さんの包丁が見事!魚もきりたんぽ鍋も絶品!

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西小山駅から徒歩2分。江戸見坂通りのセブンイレブンのはす向かいに山静(やませい)という居酒屋があります。居酒屋というより小料理屋?

※正確な時期は不明ですが、閉店しました。2022年~2023年あたり?

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この風情は気になります。「きりたんぽ一人前より」という張り紙もそそります。

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夜はこんな感じです。昼と夜じゃ表情が違うってのもいいですねぇ。行ってみました。

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70代のお父さんとお母さんがやってらっしゃいます。カウンターと小上がりがある、そこそこ広いお店です。のちにわかったのですが、山静(やませい)はお父さんの名前からつけられているようです。姓・名から一字ずつ取って「山静」。"キムタク"みたいなもんですな。

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ビールをお願いすると、こんなお通しが出てきました。里芋のようなものが入った豆腐です。

「これはなんですか?」

「石川芋の岩石です」

まったくわかりませんw 帰って調べました。石川芋(石川早生丸)は里芋の一種。一般的な里芋よりもひと回り小さい芋で、味わいは里芋に似ています。岩石は岩石豆腐の略でしょう。崩した豆腐と鶏肉やうずらの卵などを混ぜて固めたものだそうです。

ダシのきいたとろみのある餡がかかっています。振りゆず(おろし金ですったゆずの皮を振り落とすこと)されています。お通しのレベルじゃありません。立派な一品。瓶ビールを一気に飲み干し、お酒を注文しました。こんなものを出されてはビールを飲んでる場合じゃない。

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お父さんは骨董がご趣味で、美術品商許可書をお持ちです。確かにキレイなお皿や器がいっぱい。猪口もきれいです。

日本酒なので、魚がいいな。

「お刺身は何がありますか?」

「今日はぜんぜん魚がなくてねぇ。カツオかマグロか……。ああ、アジがあります。たたきでどうですか?」

「じゃあ、お願いします」

「天候のせいなのか、魚がぜんぜん。あっても高くてねぇ。アジでこんなの作るなんて久しぶりだなぁ」

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話しをしながらも、機敏に動きます。手が早い。

「こちらはどれくらいになるんですか?」

「37、8年」

「この界隈じゃかなり長いほうじゃないですか?」

「かっぱ亭さんが長いですよね。その次くらいかなぁ。このあたりも随分変わってねぇ。古いお店はどんどんなくなってるでしょう。開店した当初から値段はほとんど変わってないんだけど、うちなんか高いんじゃないかなぁ。最近のお店はどこも安いもんねぇ。昔は町工場の街だったんだよ。工場で働いてる人がよく来てくれたんだけど、工場が全部なくなっちゃったでしょう。最近は本当に暇で暇で(笑) はい、どうぞ。本当は味噌を一緒に和えるんだけど、今日は味噌なし」

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見事。小骨部分は細かく刻んでレモンに挟んでいます。たたき加減がちょうどいい。ピシっと尖った大根のツマは糸のよう。ちょびっとアジをつまんで、日本酒をキュッ。うまい!

「おいしいです」

そう言うと、お父さんはニコっと微笑みました。

それにしても、この包丁。本物です。かなりの基礎がないと、ああは振れません。

「こちらを開かれる前はどこかでやってらっしゃったんですか?」

「静岡から出てきたあと、22年、渋谷の宇田川町にあった料亭でね」

「きりたんぽがあるじゃないですか。だからてっきり秋田のご出身かと」

「いえ、その料亭がきりたんぽを出してて、ここを開く時、他であまりないから、やってみようかと。うちは毎年、おせちもやっててね。伊達巻とか栗きんとんも作るんですよ。もしよかったら、これ。一年前の栗で作った試作品だけど。新栗が入って来るのはもう少し先でね」

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甘くて濃厚な栗きんとん。おいしいなぁ。写真をいっぱい撮っていたら、こんなことをおっしゃいます。

「最近は写真を撮って、どこかに載せたりできるんだってね」

「ええ、私も食べたものは全部写真に撮っておいてるんです」

「じゃあ、これも撮っておいてよ。これも毎年やっててね。試しにやっただけだから、ふやけちゃってるのもあるけど」

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こちらも里芋の一種、海老芋。海老芋に細工を施しています。

「松竹梅とかね。おせちに入れるの」

そう言って、その場でパッパッと包丁で細工をなさります。

「すごい! きれいですねぇ」

「昔はこういうのも練習させられたんだよ。最近の人はやらないでしょう。面倒だからさ」

ここでお母さんが補足を入れます。

「学校でも教えてるのよ」

料亭仕込みで、学校の講師もなさってる。やっぱりな。ちょいちょいでできるようなこっちゃないですよ、この包丁は。そしてこの早さったら。技だなぁ。

一人前からお願いできるきりたんぽを準備して頂きます。材料をピャッピャッと切り分け、鍋に並べて、ダシを注ぎます。この一連の動作がまあ美しいこと。

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深みのある濃厚なダシ。自家製のきりたんぽはダシを吸ってうまみの塊と化します。柔らかい鳥肉、レバー、ハツもプリップリでうまい。忘れちゃいけないごぼうと油揚げ。薄く削り節のようにしているので、食感がいい。結構ボリューミー。うますぎる……。

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「浜松の舞阪出身なもんだから、月末だけうなぎもやるの。今度、ぜひ食べに来てよ。おいしいよ」

うなぎまでできちゃうのか。すげ。

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メニューが決まっているわけではないようです。その日のいいものを頼む感じ。ですが、きりたんぽが1600円、アジのたたきが800円ほどでした。お父さんは「高い店」とおっしゃってましたが、そう高くもありません。

とても楽しいお父さんとお母さんです。しっかりと手が加えられた料理は絶品です。器もきれいだし、朱色のテーブルも素敵。ちょいとつまむ感じでもいいので、ぜひ一度行ってみて下さい。山静の技と美をご堪能あれ。

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