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びゃく(学芸大学)は繊細で奥深い秋田野菜のおばんざいがおいしい、落ち着いた雰囲気の和食居酒屋です~街の色に染まる白蓮華

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裏路地に灯るびゃくのあかり

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学芸大学駅から徒歩1分。西口を出てすぐ右、線路沿いに進み、ファミリーマートの脇道を入ると「びゃく」という和食屋/居酒屋があります。2022年4月15日にオープンしました。

運営はマルホ株式会社。代表の池上善史さんは飲食店の独立・開業支援を行う株式会社上昇気流(※)の関連会社、ブラボー・ピープルズが運営する居酒屋などで経験を積み、独立。2018年に酒場きんぼし(渋谷)、2022年4月にびゃくをオープンさせました。酒場きんぼしもびゃくも上昇気流が絡んでいます。

※学芸大学で上昇気流が絡んでいるのはBistro11、囲炉裏バル カルボ、大衆酒場レインカラー、小野田商店、キリゲリ、ばりき屋、鳥せん、トラットリア夷、ひとひら。上昇気流と関係の深い楽コーポレーション(くいものや楽、汁べゑなど)の出身者はばりき屋、CHA爛PO走。

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裏路地に灯かりがひとつ。趣のある表札と重厚な蔵戸が出迎えてくれます。

柔らかな和モダンの店内

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「この先はいったいどうなっているんだろう」

わくわくさせてくれる飲食店の階段。そして急な階段の先には概ねいいお店があります。さいとう屋しかり浮雲しかりHellish APTしかり。

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階段を昇り切ると柔らかなダシの香りがふわり。温もりのある空気に包まれます。

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"温故知新"がテーマの和モダンな店内はカウンター席とテーブル席。女性客が目立ちます。

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欄間風の目隠し。花、こけ玉。柔らかな灯かりを演出する信楽焼のランプシェード。背後のレトロなタイルに合わせて塗られた冷蔵庫。料理人の腕に入ったスミさえも室礼。

代表の池上善史さんがいらっしゃったので、軽く話をうかがったところ、この界隈に馴染みがあって、学芸大学で店をやりたいと思っていたとのことでした。

秋田野菜のおばんざい、出汁のきいたおでん、魚

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初訪の客には料理・ドリンクに関する簡単な説明があります。

ワインはスタッフさんの出身地でもある山形のものがメイン。野菜は池上善史さんの奥さんの実家・保坂青果(秋田県)から仕入れているのだそう。

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クラフトビール、日本酒は日によって揃っているものが違うかもしれません。詳しくは都度、スタッフさんに聞いてみてください。

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1杯目はクラフトビール(FUJIYAMA HUNTER'S BEER)3種からヒノキラガー 斧/yoki。ヒノキの香りが心地いいビールです。

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突き出しのにこごりと大根のすりながし。にこごりはフグから。すりながしはおでんのダシ。この手のかけ方から料理への期待が膨らみます。

秋田野菜が使われているびゃくの前菜6種盛り

前菜6種盛り(1800円)。盆上には野菜しか乗っていないのですが、全体的にしっかり目の味付けで物足りなさを感じさせません。各種の名称は上のメニュー表をご覧ください。

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本日のお造りの盛り合わせ(1500円)。アオリイカ、桜鯛、本マグロ、太刀魚。皮目を炙った太刀魚は脂が乗っていて濃厚。

クオリティ相応の値段なんでしょうけど、私は少し高く感じたと正直に書いておきましょう。「あれ? 1500円でこれっぽっち?」と。

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2杯目は宇和島レモンサワー。サントリーの超炭酸が使われていて、バチバチと炭酸が躍っています。

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つぶ貝と花山葵のあられ酢掛け(780円)。花山葵(はなわさび)が切れてしまい、代わりに何かを使ったと言っていました。つぶ貝のコリコリとした食感に酢のほのかな酸味がいい組み合わせ。

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鰆のオレンジ焼き(930円)。時間をかけて焼かれた身はしっとりでジューシー。レモンやすだち、かぼすなど酸味の強い柑橘では出ないであろう深みがあります。

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3杯目はすりおろし生姜サワー。しょうが感がしっかり。

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スペアリブと新牛蒡牡丹豆腐(1180円)。角煮のごとくほろほろ。甘くてまったりなのですが、添えられた生七味がピリッと締めます。

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土鍋で炊かれる秋田県産あきたこまちの削りかつおぶしごはん、ちょうど品切れになってしまい食べられなかったハモカツと桜海老タルタル。他の席へと運ばれていくのを目で追いつつ、「次来たら絶対頼もう」と同伴者。確かにどちらもおいしそう。

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鰹節のことはかつお食堂(渋谷)で教わったのだとか。

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どの料理にも丁寧で細かな仕事が施されていて、「あれ? これは何だろう」と思わせる繊細で複雑な調味料・素材の使い方にも感嘆させられました。

気さくで楽しいスタッフたち

そしてもうひとつ印象的だったのは人です。

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ミス(まったく大したことじゃない)を笑いに変え、客を笑顔にする。

タッパーのへりに残った桜海老タルタルをかき集め、ハモカツを頼んだ客にレンゲ一杯分のタルタルを追加でサービスする。

皿を下げる際、「いかがでしたか?」「お口に合いましたか?」と声をかけ、客とのコミュニケーションを図る。

飲食業は人間中心の「商売」です。商売は人により育ち、人は商売により成長します。

これは(株)上昇気流 代表取締役社長・笹田隆さんの言葉です。店長の北村翔大さんをはじめとするスタッフのみなさんは気さくで明るく、まさにこの言葉を体現しているかのような気持ちのいい接客でした。

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会計は二人で約1万2000円。価格設定はカジュアルな和食屋と言うべきか、高級な居酒屋と言うべきか。少しお高めに感じますが、最近のこういうお店はこれくらいが普通なのかな。

落ち着いた雰囲気なので、デートにもいいでしょうし、

「鳩乃湯、大衆酒場レインカラーはちょっと若すぎるからなぁ。とはいえ、トクスエほどカッチリしてなくて……」

そんな方にもピッタリかもしれません。

学大の夜に咲く白蓮華

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さて、こちらはトイレに描かれている水墨画のような絵です。蓮(はす)の根?

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店名の「びゃく」は白蓮(びゃくれん)に由来します。

出淤泥而不染

中国北宋時代の儒学者・周敦頤が「愛蓮説」で詠んだ一節です(予独爱莲之出淤泥而不染,濯清涟而不妖)。

蓮は泥より出でて染まらず。泥の中で育ちながらも白やピンクのきれいな花を咲かす蓮のように、個性的な魅力を発する店でありたい。店名にはそんな想いが込められているのだそう。

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私は花たこ通りと呼んでいるのですが、この筋を含むT字路にはカルボ、レインカラー、件、小野田商店、東軒、Little Ottoと大人気店が目白押し。さらにレッドイン丸花、鈴や3ビルという魔境もあります。

オシャレな若者で賑わう"清"、兵どもが集うディープな"濁"(決して悪い意味ではなく)が混在する、カオスで楽しいこのエリアは言うなれば沼。ハマって抜け出せなくなる人は数知れず。

そんな学大沼にポンと音を立てて開いた一輪の白い蓮の花。泥に染まることはなくとも、この街の色には染まってもいいでしょう。

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学大の夜色に染まる白蓮華。その様は繊細にして奥深く、まとう香りは穏やかで心地のいいものでした。

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