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福長(都立大学/柿の木坂)のとんかつは上品で繊細。丁寧に仕事が施されたロースかつは柔らかく、シャキシャキのキャベツもおいしかったです。

目黒通りの都立大学駅前交差点から北へ伸びる、環七・野沢交差点へと続く道は柿の木坂通りと呼ばれています。都立大学駅前からパーシモンあたりまでは飲食店を含む商店が軒を連ねていますが、パーシモンを越えた先は基本的に何もありません。完全な住宅街。とんかつ屋が一軒あることを除けば。

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都立大学駅から徒歩10分強。柿の木坂通りのほぼ真ん中にあるとんかつ屋・福長(ふくなが)。直線距離で考えれば、学芸大学駅から徒歩15分強ほどで着ける距離なのですが、環七をまたぐ=渡れる信号が限られてる(駒沢陸橋か柿の木坂一丁目交差点)ので、徒歩20分はかかると思います。

今年で11年目といいますから、比較的新しいお店です。ただ、周りに何もないこんな住宅街で10年以上もとんかつ屋が続くというのは、なかなかどうして。いや逆に、何もないからこそ重宝されるのか?

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ご夫婦と思しき二人がお店をやってらっしゃいます。店内はシックで小ざっぱりとした雰囲気。カウンターのほかに二人掛けの小さなテーブル席、そして奥には座敷もあります。

先客がお一人いらっしゃいました。華奢だけど快活なご年配。おそらく70前後かな。「先生」と呼ばれていました。常連でお医者さんか何かをなさっているのでしょう。カウンターを挟んで三人で和やかにお話をされています。

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ロースかつをお願いして、三人の会話をBGMに店内をゆっくりと眺めます。お酒が結構あるな。夜も賑わうのかな。岩中豚? なんだろう(帰って調べたところ岩手県の銘柄豚だそう)。小春日和、チリチリという油の音、のどかな会話。落ちつくなぁ。

と、ここでこんな会話が。

「先生、お元気ですねぇ」

「健康のために何かなさっているんですか?」

「空手をね」

「えええ!」

えええ!w 思わず私も声が出そうになりました。某大学の空手部の顧問?監督?もなさっていたそうです。まったくそんな風には見えなくて、いやはやビックリ。

「私は"武道"という言い方が嫌いでね。何でも"道"がつくと胡散臭くなる。だから私は"武術"と言うようにしてるんです」

ほう、なるほどねぇ。医者らしい考え方だ(会話の中で医者もしくは医学部教授であることはほぼ確実)。

"先生"のとんかつが先に出されました。キャベツが山のように盛られています。テーブルには先の尖った容器に入ったドレッシングがあります。キャベツにドレッシングをかけるのかと思いきや、"先生"はドレッシングの容器の先端をキャベツの山にぶっ刺して、キャベツの山の中へドレッシングをピュッピュッと差し込みました。

ほう、なるほどねぇ。医者らしいやり方だ。別に根拠があるわけじゃなく、なんとなく。

私にもロースかつ定食がやってきました。

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ご飯とキャベツを一回ずつおかわりしようかなと思っていたのですが、デフォルトでなかなかの量です。おかわりはやめ。目の前のこの量でうまく進めよう。

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とんかつの衣は薄め。サクッとした軽めの衣です。肉は素性のよさもさることながら、掛けられた手を感じさせます。写真で見てわかりますかね。肉には細かく切れ込みのようなものが入っています。ジャカードでしょう。丁寧に仕事が施されていますから、とても柔らかい。

"先生"のドレッシングのかけ方をマネしてみたかったのですが、とんかつのキャベツはソースでいきたい派。少量のソースをかけて食べてみます。冷たく締められたキャベツはシャクっとした食感。いいキャベツだ。

甘めの豚汁もおいしい。おそらくは自家製のおしんこも繊細でうまい。全体的に上品さを感じるとんかつです。

近くに御代鶴 (みよづる)というとんかつ屋があります。御代鶴のとんかつは無骨で荒々しい。福長のとんかつは上品で繊細。同じ料理なのに、こんなに違うってのが面白いなぁ。

※御代鶴は閉店しました

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