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おでん やべ(学芸大学)のおでんは味に波があるからいい

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『鶴瓶・上岡パペポTV』(1987年~1998年)という番組がありました。上岡龍太郎と笑福亭鶴瓶のトーク番組です。記憶が曖昧なのですが、ある人の言葉として上岡龍太郎がこんなことを言っていました。

「レストランのシェフは男が圧倒的に多い。女性は体調に波があり、それに応じて味覚も変わる。だから、常に同じ味を提供しなければいけないレストランでは男が調理をする、と」

これに対して鶴瓶がこう言いました。

「せやけど、家では女性が料理を作りまんがな」

上岡龍太郎はこう答えます。

「そう、家の味が毎日同じだと飽きるでしょ。お母さんの体調によって『今日はちょっと味が薄いな』『今日はちょっとしょっぱいな』というほうが飽きずに食べられる。毎日、レストランの料理食べてもおいしないって」

ええ、みなさんがおっしゃりたいことはよくわかりますw 今どき、シェフは男のほうがいいとか、家では女が料理を作るものだとか、そういう考えはおかしいです。男の味覚は安定していて、女性の味覚は不安定なんてことに、果たして科学的根拠があるのかどうか。

おかしいと私も思いますが、でも、言わんとしていることはなんとなくわかります。調理するのが男か女かはさて置き、いつ行っても変わらない味というのでは飽きてしまいます。「今日はこうだな」「今回は前回よりもこうだな」というブレ・波があったほうが、楽しいしおいしいし飽きません。

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学芸大学駅から徒歩30秒。東口の八百屋・ボラボラの角を曲がった路地におでん やべという居酒屋があります。

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1940年代? 50年代? 先代の店主が神楽坂でおでん種の練り物を製造・販売していました。そして移転なのか何なのか、学芸大学で店舗を構えます(矢部商店)。現在の三菱UFJ銀行がある一画だったそう。

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その後、東口商店街のセブンイレブンのあるあたりに移転。1990年代、店舗を改装し、居酒屋・おでん やべとなりました。現在地へ移転して来たのは確か2013年だったかな。

セブンの場所に移転してくる前の話は学大で生まれ育った70歳くらいの方から聞きました。不確かなことも含まれているかもしれません。

※当記事には複数回分の写真が混ざっています

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さて、焼酎の水割り、レモン入りを注文しました。しばらくして、お母さんが「あっ」と声をもらします。パッと目を向けると、炭酸を注いでいました。

「いやいや、ぜんぜんいいですよw」

丁寧に絞られたレモン。炭酸の心地よい刺激。おいしい。

「今日も暑いですから、むしろこっちのほうがよかったですw」

気遣うわけではなく、本当にそう思いました。

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お通しはキュウリの古漬け。

キュッキュッ、コリッコリッ。素朴ながらとてもおいしい。

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そしておでんを頼みます。卵と大根とガンモとこんにゃく。

前回食べたおでんに比べて、少々塩気が濃い気がします。ダシも濃い目。大根はダシを吸って相当くたっています。

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こちらは旧店舗(東口商店街の今はセブンイレブンがある場所)で食べたおでん。大根の色、汁の色からしてわかる通り、この時は比較的あっさりでした。

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何十年とおでん やべに通っている方なら、毎晩、こういう波を感じるわけです。だけど、この波があるからこそ、飽きずに通えます。

これはおでんに限った話ではありません。人だってそうです。基本的には笑顔で優しいお母さんたち。けど、時には不機嫌なこともあるでしょう。注文が立て込みイライラすることだってあるはず。そういう波が人間味を感じさせ、温もりを感じさせてくれます。

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おでん やべは飲食店ではありますが、家のような居酒屋です。毎日通う人もいます。そういうお店で供されるおでんの味は波があって当然ですし、波があったほうがいい。波があるからこそ、ずっと長く愛され続けています。

そして、ちょっとした変化に気付けるくらいに通える店があるってのは幸せなことだとも思います。

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