肝臓公司ロゴ

TRYPEAKS(トライピークス)は力強くて重厚なペールエール。香り豊かなこのクラフトビールは"コト"を吹き飛ばすほど感動的においしい"モノ"でした

trypeaksの画像

私は少々怒っています。TRYPEAKS(トライピークス)というビールなんですけどね。飲み終えた後、ググってみました。なんだよこれは、と。信じられない。

クラウドファンディングサイト・Makuakeでビールカテゴリ史上最大の調達を達成したとか、挑戦する人を応援するビールだとか、そんなオシャレで今どきな言葉のオンパレード。

知るか。

そんなことしか語れないの? これを飲んで、そんな言葉しか出てこないの? TRYPEAKSというビールを飲んで、まず書くべき言葉はこうだろう。

くっそうめぇな!

TRYPEAKSの味

trypeaksの画像

詳細は後述しますが、TRYPEAKSブランドの第一弾はペールエール。「CRAFT BEER 01 PALE ALE」と銘打たれています。公式サイトでは「TRYPEAKS Ver.1」とも。ラベルは貼られていなくて、タグがついているのですが、ビールごとにタグが変わっていくそうです。ビールによって音楽がどうのこうのと、そんなこともあったような気がしますが、まあいいや。気になる方はググって。

参考/wikipedia:エール(ビール)

trypeaksの画像

しっかり冷えたTRYPEAKSを抜栓し、いつものアサヒのノベルティグラスに注ぎます。トクトクトク。この音。いいね。冷やし過ぎはだめ? ちゃんとしたビアグラスで飲むべき? けっ。

ペールエールにふさわしい淡い琥珀色。きめ細かな泡。香りは甘めです。まずひと口。

……ひと口が終わらない。ビールが口へ流れ込んだその瞬間、止めることができませんでした。2/3ほどを一気に飲みます。そしてひと息。

やべぇな。くそうめぇ。

飲みながら感じたのは喉に感じる清涼感。と同時に、パンの香ばしさが鼻腔へと漂ってきます。グラスから口を離すとフルーツのかすかな甘味。苦みも少々あるのですが、柑橘の皮のように甘味を補強する役割を担っています。

残った1/3をグッ。ほぉ。これは醤油だ。スタウトによく感じる醸造臭というかなんというか。一瞬、サミクラウス(復刻版ではなく)を思い起こさせました。サミクラウスは下面発酵なんですが。発酵の差は関係なく出てくるフレーバーなのかな。

後口にはほどよいアルコール感。何度だろう。5%? 普通か。もう少し高く感じるなぁ。

二杯目。泡の粒が唇に心地いい。ただ、口当たりはいいのですが、口内はササッと素通りさせない。甘味、香ばしさ、爽やかさが厚い層のように感じられます。けど、ひとたびビールが喉へと向かうと、爽やかにまた駆け抜けていく。

ストレートで風を切り、一気にシフトダウン。スピードを落とし、大きなGを感じながら体を地面にこすりつけてヘアピンを抜け、立ち上がりと同時にシフトを上げてストレート、最高速でダウンヒル。

ツインリンクもてぎのヘアピンを抜けるMotoGPのマルク・マルケス。そんな感じ。わかりづらい? いいのいいの。俺だってバイクに一切興味ないから。こういうのは雰囲気w

丸みがあってふくよかなんですが、優しいというわけじゃない。力強さを感じさせます。重厚。うん、ここまでしっかり主張して、製造者の意図がはっきりと伝わって来るというのもすごい。改めて書こう。くっそうめぇな!

trypeaksの画像

実は私の連れがTRYPEAKSのファウンダーと友達で、そんなつながりがあって2本頂いてきたのです。

「これすごいよ」

「あ、そう」

「いや、これはすごいって」

「伝えとくよ」

「違うんだよ。ここ最近、ビールでこんなに感動したことなかったんだって。これやばいって」

「『おいしかった』と伝えておけばいいんでしょ?」

「だーかーらー! 『これはすごい』と!」

「はいはい」

酒が一滴も飲めない連れには、どうもこちらの気持ちがうまく伝わらないようで。

ビールでここまで感動できたのはいつぶりだろう。これはいいビールですよ。ほんとうまい。すごい。もしビールが好きなら、ぜひ一度、試してみて下さい。公式サイトから購入できます。

TRYPEAKS公式サイト

TRYPEAKSの生まれた背景とコンセプト

trypeaksの画像
TRYPEAKS公式サイトより転載

2018年4月に酒税法が変わったということも一因となり、最高のビール作りを目指そうと考えたIT実業家・山口公大さん。自身が創業したSprinklrの日本支社を退社し、TRYPEAKSを立ち上げました。

2018年8月、クラウドファンディングサイト・Makuakeでプロジェクトを開始。開始後2時間半で目標金額の100万円を達成。プロジェクト終了日の2018年10月9日には5,623,700円という同サイトのビールジャンルで最高額支援を集めます。

さて。

サムライサーファービールというクラフトビールを作っている日本ビール醸造株式会社。同社はオリジナルブランドビールの製造もやっていて、小ロットでも地域ブランドのビールや記念ビールなどを作ってくれます。

詳細は不明ですが、山口公大さんも日本ビール醸造(株)で、オリジナルビール・TRYPEAKS 第一弾を作っていきます。

TRYPEAKSのコンセプトは

新しい自分に気づいた時、抑えこんでいた自分に正直になれた時、仲間と一致団結した時、…etc. TRYPEAKSビールは、そんな一歩を踏み出した瞬間にこそ飲んでほしい、人の挑戦を応援するクラフトビールです。

TRYPEAKSの特徴は原料の種類、量などを変更しながら、ビール自体も変化させること。第一弾となるペールエールは国産ホップを使い、強い香りを出すことを意図しています。

2018年11月7日、こうして第一弾のTRYPEAKSがリリースされました。

TRYPEAKSは"コト"じゃない、"モノ"なんだ

trypeaksの画像

そりゃストーリーも大切さ。作り手の想いも、それに共感する輪も重要でしょう。けど、そっちばかりというこの状況ってどうなのよ? だって、ビールが好きな僕たちにとって一番大切なのはグラスに注ぐ音、グラスから立ち上る香り、口にした瞬間の幸福感・感動でしょ?

なのに、ネット上には味に関するレポートが皆無。オサレなITっぽい言葉が躍り、コンセプトやらこだわりやらだけが語られるのみ。一度「TRYPEAKS」でググってみてよ。あるいはtwitter検索でもいいけどさ。味のことなんてほとんど触れられてないんだから。これがいわゆる"モノ"から"コト"ってやつ? そっすか。

ブランドをディスってるわけじゃないんです。ブランドは熱い想いを語ればいい。調達を得るには"コト"も必要でしょう。けど、メディアとしては想いもさることながら、まずはサービスであったり商品であったりを見なきゃいかんだろうと。その上で、というさ。

少なくとも私は"コト"を遥かに凌駕する"モノ"としてのTRYPEAKSに魅力を感じました。TRYPEAKSの味の頂(いただき)に立つと、"コト"が霞んで目に見えない。