MEAT JOURNEY 2018

学芸大学のコロンビア料理店「EL RANCHO(エル・ランチョ)」の歴史~怪しい入口の先はコロンビア親父の家

学芸大学駅から徒歩約7分。五本木交差点のたこ焼き屋「花たこ」の隣にラテン・アメリカの音楽・お酒・ご飯の店「EL RANCHO(エル・ランチョ)」というお店が”オープン”しました。入るのに苦労するお店なので、入口から順を追ってご案内!

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五本木交差点に「花たこ」。そのすぐ隣に「EL RANCHO」の看板があります。看板のすぐ奥に白い扉がありますが、これはトラップです。開きません。どこが入口かというと、左の板塀にご注目。

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どこかで見たことのあるようなマークですがw、建物と塀の隙間、人が横にならないと通れないほどの通路が入口です。怖がらずに進みましょう。

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ようやく飲食店らしさの漂う入口登場!と思いきや、扉を開けると……。

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地下へ下る階段! いったい私をどこへ導こうとしているのか……。階段を下れば、ようやくお店。中からは賑やかなラテンミュージックが聞こえてきます。ではいよいよ店内へ!

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お前かよ!www ベタなツッコミを入れてしまいそうになりました。聞こえてたのは店主の熱唱だったのです。誰もいない店内で、一人、カラオケに興じる店主。私が入っても目で挨拶をする程度。歌は続きます。

楽しそうなので、カウンターに座って聴いて……というか、この店主、歌すごいじゃん。超絶うまい! CDか何かの音楽と聞き間違えるほどうまいんです!

歌が終わったので、落ちついて店内を見回します。まず、気になったのはこのカラオケ。

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こんなの見たことがありません。海外ではこんなカラオケがあるのかな?

「コロンビアにカラオケない。日本のカラオケ、ラテン音楽少ない。だから、わたし作った」

えええええ! カラオケを自作!?

「わたし何でも自分でやる。壁の絵も自分で描いた」

店内の壁には色とりどりの絵、紋様がいっぱい。全部、主人が描いたとのこと。すごいなぁ。

とりあえずビールとつまみを注文しつつ、店主と会話。かいつまんで書きますと、こんな感じです。

「出身はコロンビア。日本に来て30年。1ヶ月前にできた。狭いね。だけど楽しい。

音楽なんでもできる。歌が好き。ここでもカラオケ、サルサ、みんなやる。スペイン語話せる? わからない? 歌ったらすぐ覚えるよ。

ラテンの人、東京少ない。家賃高いから、みんな千葉、埼玉、横浜ね。恵比寿にコロンビアの店ある? ああ、聞いたことある。だけどわからない。恵比寿、すぐ変わるね。

これおすすめ。タマール。おいしいよ」

来日30年でこの日本語。ボビー・オロゴン方式!? んなわけないか。なんて思いつつ、タマールなる料理ができるのを待ちます。煮込んでるのかな? 鍋のようなものを火にかけ、主人はカウンターへ戻り、話が続きます。

「中目黒で大きなお店やってた。70坪。250人は入れた。だけど潰れて、いまここ。もう潰すのイヤ。これフィニッシュ。入るの怖いね。だけど、がんばればそのうち来てくれる。がんばるよ。ほんとうにがんばる」

何度も何度も「がんばる」と繰り返す店主。会話の途中では聞き慣れないスペイン語的な店名っぽいタームも出てきました(のちに判明)。これまでいくつかの店を経営してきたのでしょうか。事情があって潰れては作り、潰れては作り。この店にかける意気込みを感じました。

そんなこんなで、料理ができたようです。

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見たことのない料理です。聞けば、トウモロコシの粉を練ったもので、バナナの葉に包んで蒸した料理がタマール。自家製のチリソースをたっぷりつけて頂きました。なかなかおいしいです。中には豆や豚バラ肉が入っています。それよりも……デカいな。一人でこれを食べ切るのは大変でしたw

お腹がいっぱいになってしまったので会計。ビール600円、タマール900円、TAX100円(適当w)で1600円。また来ますと告げ、店をあとにしました。

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さて、家に帰って店のことを調べてみました。そうすると、知らなかった事実がわらわらと。以下は、私の推測も含まれています。事実と異なることがあるかもしれません。ご了承下さい。

店主の名前はエンリケ・サンブラノ氏。ずっと音楽をやっていて、来日後も演奏活動やタレント業をしていたのだとか。なんと、高見山の丸八真綿(マルハチ)のCMにも出ていました。

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左から二番目がエンリケ氏

1987年、中目黒の高架下に「EL RANCHO(エル・ランチョ)」を開店します。常連客で賑わう有名店だったそうです。

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1990年、中目黒の別の場所に「ラ・カバーニャ(La Cabaña)」として移転。生バンドが演奏でき、100人規模の人間が踊れる大きなお店でした。

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1999年に閉店し、2000年、現在の地、学芸大学に「エル・ドラド(El Dorado)」を開店します。当時は1階部分で営業していたようです。

ここからは不正確なのですが、2012年、「エル・ドラド(El Dorado)」も閉店します。建て屋も取り壊されました。そして、2015年2月ごろ、エンリケ氏が一番最初にオープンさせた店の名前「EL RANCHO」に戻し、店舗を地下へ移して再出発、ということかな?

いずれにせよ、とても有名な店・店主のようです。すみません、まったく知りませんでした。しかも、音楽をやってきた方に「うまーい!」なんて拍手していた自分。ハハハ……(^^;

こんな店の歴史を知って、ようやく「がんばる」の意味が実感をもって理解できました。

【参考サイト・画像出典元】コロンビア&南米料理 レストラン・バー El Drado

さて、「EL RANCHO」という言葉の意味ですが、elは男性単数の定冠詞(英語のtheに相当)です。ranchoにはいろいろな意味があるようです。

rancho (ランチョ)

スペイン語各地で、農地・牧場に関して、いくつかの意味で使われていることば。アメリカの英語にも移入され “ranch” として使われている。

アルゼンチン~ウルグアイでは、農民や牧童の家のこと。説明が長々しくなるので、日本語では簡単に「小屋」と訳すが、れっきとした住居である。相当に大きい場合もある。典型的なものは、壁と屋根は土と藁(わら)や干し草を混ぜたもの、床は土。パンペーロ (南極から吹いてくる冷たい風) から身を守るために、北側に入り口がある。

タンゴには関係のないことばだけれども、都会の人が自分の家はみすぼらしいと卑下して、あるいは他人の家を皮肉って、あるいは単にユーモラスに「家」というだけの意味で、《ランチョ》ということばを使うことはよくある。

高場将美のページ:タンゴのスペイン語辞典

店名の「EL RANCHO」が意味するところはわかりませんが、このような説明を読むと、「拙宅」なんて日本語を思い起こします。

歌が好きで、お酒が好きで、人が好きで、店を始めて30年。故郷から遠く離れたこの地で、これが最後の店だと決意し、「がんばる」を繰り返すエンリケ氏。エンリケ氏の”拙宅”が、かつての賑わいを取り戻す日を願ってやみません。

EL RANCHO(エル・ランチョ)
東京都目黒区中央町2-36-10
※駒沢通り五本木交差点を学芸大学駅方面へ向かった5m先左手。「花たこ」隣

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