コートいらずの陽気が続いたかと思えば、真冬の寒さに逆戻り。その日も冷たい雨の日でした。いつもなら家でおとなしくしておくところですが、酒の虫がうずきます。啓蟄(けいちつ)ってのはこういうのも指すのか?w
足元はジクジク。ダウンは雨を吸って重くなります。だったら近場にしときゃいいのに、なぜゆえあえて遠くを目指してしまうのか。自分に鞭打つこの状況はSとMの自作自演。
学芸大学駅、武蔵小山駅から徒歩15分強。祐天寺駅からだと15分弱ほど。目黒通りの油面交差点から北へ伸びる油面地蔵通り。昼も夜も人通りはそれほど多くありません。ただ、学校があるため、子供たちの元気な声がかろうじて通りを活気づけているように見えます。
シャッターが閉まっている店も多いこの商店街には、片手で数えられるほどの飲食店があります。今回やって来たのは、油面地蔵通りの北端に近い場所にあるやきとり屋「こだるま」。3年ほど前から存在には気づいていて、いつか行ってみようと思っていたのですが、わざわざこんな日を選ばなくてもw
店内は小洒落た和食屋といった趣です。シックな木目調でゆったり。カウンターがあり、その奥にはテーブル席が2つ3つ。ご夫婦と思しきお二人がやってらっしゃいます。
甘めの生グレープフルーツサワーは私の好きな味。お通しのおでん風煮込みはダシがきいていてとてもおいしいです。
ひと品目はガツのポン酢風味。
ガツをスライスして、ラー油とポン酢で和えています。シンプルな見た目ですが、味わいに奥深さを感じさせる一品です。ただ、調理過程でドープはしていませんでした。ガツの茹で方、あるいは保存の仕方にひとつ工夫が加えられているのかな? たとえば、鶏ガラのダシでボイルしているとか。旭ポンズの威力だけじゃあるまい。こりゃうまいなぁ。
続いて、3月で終了するもつ煮込み。
豚のいい香り。トゥルンとしている白モツはとても柔らかい。モツのうまみがしっかり出ているので、白味噌のまろやかな感じとよくマッチしています。濃厚でふくよか。こいつも上等だ。いつかマネしてみよう。
ご夫婦は物静か。おそらく、普段はこうじゃないでしょう。きっと朗らかなお二人だと思います。静けさ漂うこんな雨の日に、こんな男が一見でやって来たら、そりゃあw 緊張を解くため、こちらから声をかけるのもやぶさかじゃない。でも、なぜかその日は黙していました。
外からはパラパラという雨の音が聞こえてきます。時折、シャーっとタイヤが路面を蹴る音。客は私一人。たまにはこういうしんみりもまたよし。
2杯目のレモンサワーを飲みつつ、やきとりを頂きます。
レバー、かしら・ハツ・あぶら、正肉・肉巻にんにく・手羽先。
じっくりと焼き上げています。どれも表面がパリッ。もつ焼きはモツというより豚肉の風味が前面に出ています。豚のうまみがたっぷり。ガスの網焼きでしょうかね。どの串にも油がコーティングされているような感じがします。ですから、どれもこってり。ふむ、酒飲みにはこれくらいがちょうどいい。おいしいなぁ。
串を食べ終える頃、店の扉がガラッと開きました。入って来たのは20代前半くらいの男の子と女の子。お店の方の様子からすると、二人も一見? へぇ。その歳で、こんな店に来るのか。いいね。おっちゃん嬉しいよ。こういう素敵な居酒屋、他にももっといっぱいあるからさ、どんどん飛び込んで。その好奇心、軽やかさが居酒屋文化を存続させるんだよ。と、心の中でおっちゃんの余計なお節介。
お会計をしてもらいました。
「ごちそうさまでした」
「ありがとうございます」
お二人の笑顔を初めて見ました。これがいつもの表情なんだろうな。ごめんなさい、変な雰囲気を出しちゃってw
表は相変わらずの冷たい雨。帰路を急ぐ人たちとすれ違いながら、油面通りを学芸大学駅方面へ向かいます。「もう一軒」と駄々をこねる酒の虫を引き連れて。
SHOP DATA
- こだるま
- 東京都目黒区目黒4-21-16
- 03-3719-1868
- 公式
最後に「油面」についてのオマケ。
油面(あぶらめん)という地名は現存しません。油面小学校、油面公園、油面交番といった名称にその名残が見て取れるのみです。
「油面」という言葉(地名)の由来は諸説あるようですが、基本的には菜種栽培が盛んだったことからつけられた地名だそうです。
今回、行きは目黒通りから油面地蔵通りに入りました。帰りは油面通り。学芸大学駅から「こだるま」へ行くのなら、油面通りを行くのが一番近いと思います。
油面通りは「ぽかぽかランド 鷹番の湯」の裏手、スポーツジム「セントラル」の少し手前から北東方向へ伸び、最終的には山手通りの田道(でんどう)交差点へと続く道です。