肝臓公司ロゴ

立ち食いそば/うどん店・よりみち(大岡山)でかき揚げうどんを食べ終え、店頭のベンチに腰かけていたら、なるほど確かにここは"聖地"だと合点した

yorimichiの画像

目黒通りと環状七号線の交差点は柿ノ木坂陸橋。ここから環七を南下すると、平町一丁目、大岡山小前、南……と信号のある交差点が続きます。南の交差点にはセブンイレブン、ガソリンスタンド、ネッツトヨタ東京があり、もうひとつ、立ち食いそば店「よりみち」があります。今回、ご紹介するのはこの「よりみち」。

yorimichiの画像

大岡山駅を出て、大岡山北口商店街を真っ直ぐ。環七に出るとそこが南の交差点。学芸大学住人視点で言えば、さすがに学芸大学駅から徒歩では行きづらいですが、自転車ならすぐ。円融寺、碑文谷八幡近くにお住まいなら、徒歩でも十分行ける距離です。

環状七号線・南の交差点はちょっと面白い形をしています。喉をつまらせた蛇のごとく、交差点部分が膨らみ、広場のようになっているのです。この"広場"を中庭然とさせているのが「よりみち」。

yorimichiの画像

相当に古いお店ではありますが、正確な創業年はよくわかりません。もともと店主・米次郎氏は神楽坂で「米次郎」という立ち食いそば店を営んでいて、6年ほどで閉店、その後、現在の地に移転してきました。「よりみち」の看板が今でも「米次郎」となっているのはそのためです。

yorimichiの画像
店主・米次郎氏の後ろ姿

「よりみち」は立ち食いそば店マニアの間では有名なお店です。また、車のドライバーやバイクのライダーにも愛されてます。私が行った日も店頭にはタクシー、バイクが停まっていました。

yorimichiの画像 yorimichiの画像

立ち食いそば店ではありますが、立ち食いスペースは全体の2割ほど。店内には小上がりとテーブル席があります。また、店前の"広場"にはベンチがあり、外でも食べることができます。

この日、店に立っていたのは米次郎氏ではなく、もう少し若いお兄さん。うどん、かき揚げ、コロッケ、いなり寿司をお願いしました。

yorimichiの画像

テーブル席につき、ちょうどその日に開会した甲子園の実況をBGMに、うどんを頂きます。

yorimichiの画像

ツユの色は濃いですが、味はそこまで濃くはありません。甘めでしっかりダシがきいています。サッとお湯で温められたうどんは少し細めで柔らかめ。巨大なかき揚げ、コロッケはツユをいっぱい吸っています。

yorimichiの画像

いなり寿司は甘くてしっとり。

なーんかいい。立ち食いのできあいうどんとしては上等です。おいしい。

yorimichiの画像
yorimichiの画像
麺はむらめん株式会社(用賀)

器を返し、店を出ます。ちょいと一服するか。店頭の自販機で100円の缶コーヒーを買い、ベンチに腰かけタバコに火をつけます。ふぅ、落ちつくなぁ。と同時に、不思議な気分になります。この光景をずっと眺めていたい。ここから立ち去りたくない。そう思わせるのです。なぜだろう……。

おこぼれを狙うすずめとハトが各3羽。生い茂る木々。すぐ隣は環七ですが、ここだけ時間の流れが異なっています。ゆっくりと、音を立てずにひっそりと時計の針は進み、鳥のさえずりと新緑は、まるで往来の激しさから「よりみち」を隠しているよう。大切な何かを守るかのごとく。

ああ、そうか。立ち食いそば店「よりみち」は大切なお店なんだ。ドライバーにとって、街にとって、そして私にとって。

yorimichiのメイン画像
別日のかきあげそば

駅前にも、なんなら駅構内にも立ち食いそば・うどん店はあります。サッと食券を買い、サッとそば・うどんをかき込み、サッと店を出て、仕事に戻る。ワンコインで満腹感が得られます。

ここ「よりみち」も同じではあります。でも、この店の佇まい、店前のこの雰囲気は、お腹を満たす以上の何かを満たしてくれます。立ち食いそば店の、ドライバー・ライダーの"聖地"とも言われるその理由がよくわかる気がします。

yorimichiの画像

缶コーヒーを飲み終え、自転車をまたぐと、後ろからハトがついてきていました。そうだよな。ここはお前にとっても大切な場所。いつまでも続くことを祈ろうぜ。

ペダルをひとこぎすると、ハトも飛び去りました。またなー。

SHOP DATA