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下馬のそば屋・光月(こうげつ)は人におすすめしづらいですが、自信を持ってこう言えます。私は大好きです、と。

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学芸大学駅から徒歩13分。世田谷観音通り(旧明薬通り)と下馬通りの交差点に光月(こうげつ)というそば屋があります。以前、ネット上で見た界隈の古地図からすると、60年ほど(?)続く老舗です。

※追記:2023年4月13日、建物の取り壊し及び建築計画のお知らせが貼られているのを見かけました。情報によると「店主高齢のため閉店」という張り紙もあったそうです。追記以上

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私が口開けでした。汗だくで入ったのですが、ひんやりと冷房がきいていて気持ちいい。冷えたお水を頂き、注文しようとするのですが、な、悩む……。

初訪なので、もりそばは食べたい。けど、カツ丼も気になる……。迷ったら2ついっちゃえばいいか。

「カツ丼ともりそば下さい」

「だったらセットにするのはどうですか?」

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カツ丼とたぬきのセットができるんだから、そりゃ丼ともりもセットにできるか。カツ丼&もりそばのセットをお願いしました。

古いお店の割にはきれいです。お父さんはそば担当、お母さんはカツ丼を作っています。お二人ともほがらかでとてもいい感じ。途中、アルバイトの女性がやって来ました。この方もかわいらしい方でした。

そして出てきたのがこちら。

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これぞもりそば! いや、ほんと。本来的にはこれが正しいもりそばです。

江戸時代、ある店が他店との差別化を図るため、そば(そば切り)をざるに盛り、「ざるそば」と呼んで売るようになった。これがざるそばの起源。で、普通に器に盛られた従来のそば(そば切り)は「もりそば」と呼ばれるようになりました。ですから、歴史的に見れば、器に入れたこのそばを「もりそば」と言うのは正しいのです。もちろん光月としてはそんなことまで意識してるわけじゃなく、セットの場合は器、単品の場合はざるに盛る、くらいな感じなんでしょうけど。

そばは典型的な機械麺です。汁は激甘。なるほどなるほど。壁に「カツ丼・たぬき」と書かれていた理由がわかりました。こりゃ、もりで食べるよりたぬきにしたほうがいいよね。

それにしても、なぜ牛丼・カツ丼・カレー丼はたぬきとのセットで、親子丼だけがきつねなんだ? 「おすすめ」としているからには、なんかワケがあるんだろうなぁ(上写真参照)。あ、そうか。たぬきでもきつねでもよくて、両方あるってことを知らせるために、便宜的にこう分けているだけ?

いや、待てよ。もしかしたら、とてつもないこだわりがここに隠されている!? 牛、豚と油揚げは相性がよくない。鶏には天かすよりも油揚げの方が合う。と思ってたり? んなわけねーかw

カツ丼はミニサイズのはずですが、それなりにボリュームがあります。濃くて甘いダシです。これこそそば屋のカツ丼。

食べている間、ひっきりなしに電話がかかってきていました。出前の注文です。途切れることなく鳴っています。猛暑でご近隣の方々は出たくないのか、あるいは通年こうなのか。ご年配の多い地域ですし、普段からこうなんだろうな。

※追記:その後、ご主人がひっきりなしに出前に行く様子を幾たびも目にしてきました。普段から出前が多いんですね。追記以上

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こちらは光月がいかに長く続いているか、いかに出前が多いかがわかる写真。

ある日、たまたま付近を通ることがあり、光月の外観を眺めていたら、ご主人が出前から帰って来ました。スタンドを出しカブを停めると大きく左に傾きます。ご主人は店頭にある石を蹴り、スタンドが接しているアスファルトに設置。石の上にスタンドを立てました。

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アスファルトをよく見ると陥没していました。長い年月、同じ場所にカブを停めているので、アスファルトが陥没したのでしょう。

老舗のカブ、アスファルトを穿つ。

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駅前のチェーン系のそば・うどん屋と、もりそばが一枚1000円する高級な手打ちそば屋の2極化が進んでいて、なんでもある、定食屋のごとき街場のそば屋は少なくなってきています。けど、庶民の、地域住民の味方として長年続いてきた街場のそば屋、私は大好きです。

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