MEAT JOURNEY 2018

「せたが屋」(駒沢大学・学芸大学・三軒茶屋)の魚介が強いダブルスープは濃厚で、今なお支持され続けています~環七ラーメン戦争と「せたが屋」がラーメン界にもたらした影響

駒沢大学駅から徒歩15分弱。三軒茶屋駅、学芸大学駅から徒歩20分。環状七号線・龍雲寺交差点にあるラーメン屋「せたが屋」。

夜は魚介系と動物系のこってり濃厚ダブルスープの「せたが屋」ですが、昼は「ひるがお」というさっぱり塩ラーメンの店になります。いわゆる”二毛作”。休日ともなれば行列ができる大人気店です。2016年に吉野家ホールディングス傘下になったというニュースが大きな話題となりました。

メニューはこんな感じ。店名を冠したメニューはどうもコスパが悪い気がします。だったら、デフォのらーめん+餃子がおすすめ。せたが屋らーめん1030円より、らーめん+餃子=1120円のほうがお得な感じしません?w


店内はカウンターとテーブル席。去年だったか一昨年だったかに改装して、テーブル席ができました。

何度も来てますが、その日に頼んだのはこちら。

海老入りわんたん麺。スープの濃度は以前よりも薄く、サラサラになったような気がします。昔はもっとドロッとしていたような。けど、相変わらず魚介の風味は強く、こってり濃厚です。

もっとガッツリした魚郎ラーメンもおいしいのですが、私は基本的にはスタンダードを選びます。魚郎ラーメンを食べるんだったら、すぐ近くの系列店「ふくもり」に行くかな。

つけ麺はモチッとした平打ち麺が特徴。かすかな酸味を感じさせるつけ汁は魚介がしっかり香ります。

麺は愛知県産小麦「絹あかり」100%の自社製麺。関連会社・コナノチカラ製麺所の麺です。「せたが屋」のスープに最適な麺を作ろうと、2015年に設立されました。

パリッとした高知屋台餃子もうまいんだな。

余談ですが、一人じゃないですよ。以上は二人で頼みました。そりゃそうでしょw



休日ともなれば、昼も夜もいまだに行列ができています。遠方からも客が押し寄せる。これだけ支持され続けているということは、それだけ「せたが屋」のラーメンに魅力があるということでしょう。

今となっては当たり前となった濃厚魚介系ラーメンですが、その源流は飽きられることなく、いまだ健在。私はどちらかというと「ふくもり」派で、食べた回数も「ふくもり」の方が断然多いのですが、久しぶりに「せたが屋」を食べ、やっぱすごいなぁと改めてうならされました。

環七ラーメン戦争と「せたが屋」の功績

1980年代、関東で豚骨ラーメンブームが巻き起こりました。その一翼を担ったのが環状七号線沿い、新代田にあった「なんでんかんでん」(1987年創業)。環七にはすでに「土佐っ子」という人気店もあり、1988年創業の野方ホープなども加わって、”環七ラーメン戦争”が勃発します。

当時の日本はバブル(1986年~1991年)の真っただ中。タクシーや自分の車で環七沿いのラーメン屋へ向かうというのが当たり前のことでした。もちろん、いけないことではあるのですが、まだ意識が低かったせいもあり、飲酒運転・路駐もザラ。

ところが、バブルがはじけ、また、東名高速飲酒運転事故(1999年)をきっかけに飲酒運転の取り締まりが厳しくなり、環七への客足は鈍化。さらに、1994年に新横浜ラーメン博物館が開館、1996年には「麺屋武蔵」「青葉」「くじら軒」といった個性的なラーメン店が相次ぎ出店し、ラーメン業界は百花繚乱の様相を呈します。そんなこともあって、環七ラーメンブームは下火となりました。

「せたが屋」が誕生したのはまさにその頃です。2000年、ラーメン戦争が終結した環七で創業しました。

「せたが屋」の創業者は前島司氏。「せたが屋」が登場した頃から、ラーメン業界では”人”がフューチャーされるようになります。ご当地ラーメンをもじって、”ご当人ラーメン”とも呼ばれていました。たとえば「麺屋武蔵」(1996年~)の山田雄氏、「なんつっ亭」(1997年~)の古谷一郎氏、「中村屋」(1999年~)の中村栄利氏、そして「せたが屋」の前島司氏。個性的な店主が作り出す個性的なラーメンが続々と登場します。

ここで確立されたと言ってもいいのがWスープです。豚骨や鶏ガラなどの動物系スープと、節や煮干しなどの魚介スープを合わせた濃厚なスープが人気を博しました。「青葉」がその先駆者と言われているのですが、魚介を色濃く出した「せたが屋」もまた、Wスープ、魚介系ラーメンの新たな潮流に乗って、業界をけん引します。

「ひるがお」のラーメン

そんな「せたが屋」がラーメン界に残した功績は大きくふたつ。まず、昼夜あるいは曜日によってラーメンを変えるという”二毛作”を始めたということ。「せたが屋」が初めてというわけではないのでしょうけど、「せたが屋」が「ひるがお」を開始してから、二毛作のラーメン店が増えました。

もうひとつはラーメンを世界に進出させたということです。2006年にニューヨークに出店して以降、日本ラーメンの認知度、人気が海外で高まり、他店もこぞって海外進出を果たすようになりました。

また、私たち学芸大学住人にとっては、「麺処 びぎ屋」というとてつもないラーメン屋を生み出したのが「せたが屋」という点も大きなことでしょう。「麺処 びぎ屋」店主・長良貴俊氏は前島司氏に師事し、「せたが屋 本店」店長を任され、「せたが屋 ニューヨーク店」「ラーメンゼロ」の立ち上げ時には店長となり、その後、独立。2009年7月に「麺処 びぎ屋」をオープンさせました。「せたが屋」があったからこそ、「びぎ屋」のおいしいラーメンが食べられる、と言えなくもない。

環七・龍雲寺交差点のランドマークだった、今はなき「珍々ラーメン」

ところで、2000年頃から現在まで、環七の上馬交差点~駒沢陸橋の間(東京都世田谷区野沢2、3、4丁目)で営業していた(営業している)ラーメン屋は次の通りです。

  • つけ麺や 穣
  • 高味
  • 燎原(りょうげん)
  • ハップンラーメン 順基
  • 赤坂ラーメン 駒沢店
  • 大勝軒 環七野沢店
  • まるきんラーメン 上馬店
  • 麺くらい
  • 豚野郎
  • 博多屋台ラーメン 一竜
  • 珍々ラーメン
  • ふくもり
  • せたが屋
  • まっち棒

これだけあったのに、現在でも営業しているのは「まるきんラーメン」「せたが屋」「ふくもり」の3軒だけ。しかも内2軒は同系列。環七でラーメン屋をやる難しさを見て取ることもできますし、あるいは「せたが屋」「ふくもり」のすごさを改めて思い知ることができる結果でもあるでしょう。

もしまだ「せたが屋」に行ったことがないならぜひ。ラーメンの歴史に確実に足跡を残している店。環七ラーメン文化をかろうじて、でも力強く継承している店。近くに住んでるなら、一度は行ってみないとねw

せたが屋
東京都世田谷区野沢2-1-2
03-3418-6938
公式サイト

※駒沢店(本店)のほか、品川品達店、羽田国際空港店、アクアシティお台場店、東京ドームシティ店、越谷レイクタウン店、ニューヨーク(3店舗)があります。詳しくは公式サイトで

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