MEAT JOURNEY 2018

「Kitchen Bar 柿の木坂LOFT(ロフト)」(学芸大学・駒沢大学)は野菜がおいしいダイニングバー。穏やかで柔らかな店主は生産者と消費者をつなぎ、地域とのつながりを願う

学芸大学駅、駒沢大学駅から徒歩15分強。環状七号線・野沢交差点に「Kitchen Bar 柿の木坂LOFT(ロフト)」というダイニングバーがあります。2017年10月28日にオープンしました。

オープン日は関東に近づく台風の影響で大雨。なぜ、こんな日にわざわざ……と半ば自分に呆れつつ、足はなぜか柿の木坂へ向かいます。

「いらっしゃいませ」

店主は50代半ばほどの男性です。料理の鉄人としてもおなじみのフレンチのシェフ・石鍋裕氏を彷彿とさせる風貌w

「今日オープンしました。一人目のお客様です。ありがとうございます」

ははは。そうなっちゃったか。


何屋と言うか、どういうカテゴリーの店と捉えればいいんだろう。お酒だけでもいいのかな。

「もちろん、お酒だけでも大丈夫です」

一杯目はLongbord Island Lager(ロングボード・アイランド・ラガー)。ハワイ・コナ社のビールです。

「オープン記念で一杯目はサービスさせて頂きます」

なぬ。そうとわかっていたら原価率の低いものを頼んでたんだけどなw ちょっと申し訳ないような。

「チャージは頂かないんですが、こちらお通しです。実は5年ほど農業の学校の寮長をやってまして、学校の卒業生が地元などに帰って育てた野菜を仕入れさせてもらってるんです。このカボチャもそうなんです」

農業の学校と言うと、このあたりだと東京農業大学(東京都世田谷区桜丘)を思い出します。

「いえ、東農大ではありません。農業をイチから学ぶというよりも、農業のことをわかった上で、たとえば実家を継ぐとか、農業経営を学ぶために来る学校なんです。その寮が川崎市にあるんですが、そこで食事を含めた日々の生活を支える寮長をしていました」

具体的にどことはおっしゃっていなかったので、帰って調べてみました。もしかしたら、一般社団法人アグリフューチャージャパンが運営する日本農業経営大学校かもしれません。校舎は品川ですが、寮(全寮制)は川崎市の中原にあります。

「寮長をやる前は30年以上、○○○で働いていました。いろいろ思うことがあって辞めて、そうしたら妻が農業をやりたいと。さすがにこの年ですから、農業をやるのは無理だと思ったんですが、そんな中、たまたま農業の学校の寮長を募集していて、それも面白いかなとやってみることにしたんです。寮長を始めて、野菜がこんなにおいしいのかと気づいて、大変お世話になりましたし、今度は私がおいしい野菜をみなさんに提供して喜んで頂ければなぁと。生産者と消費者をつなぐと言いますか」

差し障りないとは思いますが、一部、伏せました。○○○は誰もが知ってる某企業です。

こと細かに質問していたわけではありません。ご主人みずから淡々と語っています。初めての飲食店。オープン日。相当な不安と緊張があったはず。

「こんな雨ですし、宣伝は一切してませんし、今日は”坊主”かなと思ってたんですが、こうして来て頂けて、本当に嬉しいです。ありがとうございます」

一人目の客が来たことで、少しホッとしたのかもしれません。いろいろな思いが溢れ出ているようにも見えました。

せっかくですから、料理も頂いてみましょう。

「メニューはその日の仕入れによって変わります。ランチもやる予定です」

熊本・天草産放牧豚と茨城・阿見産玉葱の生姜焼き(600円)をお願いしました。熊本で豚か。あまりイメージないなぁ。それに豚の放牧というのもそれほど聞きません。

「8000頭放牧してて、こっちで言えば『マザー牧場』のような感じで子供たちが遠足に来りもするようなところなんです。玉葱は卒業生から送ってもらってます」

寮長として料理もやっていました。ですから、初めての飲食店とは思えない慣れた手つきで調理なさいます。

「このドレッシングは○○○○(※失念)で、レタスも送ってもらってます」

うわぁ……。

風乃詩三河屋ねこにこばん三和食堂マイキッチン たきたて食事処 和(閉店)自作(肉のますや)

すべて、このブログで紹介したしょうが焼きの画像リンクです。何が言いたいかというと、これだけしょうが焼きが好きだということです。そんな私が断言します。このしょうが焼きはうまい。

肉はどこの部位でしょう。この上なく柔らかく、豚のうまみがとても強く感じられます。甘めの味付けなのですが、決して濃すぎることはなく、豚の味わいを殺しません。シャクっとした食感を残した玉ねぎもおいしい。レタスも、ドレッシングもおいしい。いやぁ、本当にいい料理だ。一瞬で平らげてしまいました。

「あっという間に食べられましたね。嬉しいなぁ。一応、ご飯もあるんですが、あったほうがいいですかね」

食事をしに来たいという人もいるだろうから、まあ、店の負担にならないのであれば、あるに越したことはないかな。

「オープン前、知人に来てもらったりしていたんですが、いろいろ言われたんですよ。お酒はこういうのを置いた方がいいとか、お店のコンセプトをどうとか。けど、ここに来るのは地元の方たちですから、そういう方々のご意見をうかがいたいんです。この辺りはあまり飲食店がないですよね。どうなんでしょう……」

環七に限らず、246、駒沢通り、目黒通りもそうなんですが、駅から離れた主要幹線道路沿いは飲食店経営がなかなか難しく、客が入っているのはごく一部というのが現状です(この界隈の話ね)。

すぐ隣にあった居酒屋「屋台屋さん」は2年ほど前に閉店しました。少し先の物件では2軒連続でラーメン屋が長続きせず閉店(※1)。この物件(※2)も正直、厳しかったように見えます。住宅街でもありますし、人通りはあるのですが、駅の近くで飲んだり食べたりして、この辺りには帰って来るだけ、という人が多いのかもしれません。

※1:麺くらいは長く続いたものの、続く豚野郎麺八はすぐ閉店

※2:Bar Bao Babの後、豚屋太一→尾道のりこ家→柿の木坂LOFTと移り変わって来ました

「学生の頃まで碑文谷に住んでたんです。ですから、またここに戻って、という気持ちもあったんです。このあたりは地域の交流ってありますか?」

「屋台屋さん」でも野沢稲荷神社前にある居酒屋「ふっこ」でも、そういう話になりました。もちろん昔から代々、この地に住んでいる人もいます。けど、他地域から移り住む人も多い。そんなこともあって、地域住民の交流はそれほど盛んではないようです。

また、こんな話も聞きました。ここは目黒区と世田谷区のちょうど区境。区が違うと、何かとそれが足かせになると。

「この地域に根差したお店にしたいんです。気軽に寄れる、地域の方々の交流の場になればいいなぁと」

二杯目はラム・マイヤーズのロック。

「お酒もこれから勉強していかないとなぁと思ってるんです。卒業生が新潟の『麒麟山』というお酒の酒蔵で米を作ってるんですね。だから、それも置こうかと。あ、こちらのポップコーン、食べ放題なのでどうぞ」

チャージなしなのにこのサービス。大丈夫かなw

「自由が丘に『LOFT(ロフト)』というバーがあるんです。新宿などに『LOFT』ってライブハウスありますよね。もともとはそこの系列だったんですが、独立して現在までバーとして営業しています。学生時代、もう35年ほど前ですが、そこに入り浸っていて、私を形作ってくれたのが『LOFT』。今回、出店するにあたって、『LOFT』という店名にしたくて、『LOFT』へお許しを頂きに行ってきました。そこもこうしてポップコーンを出すんです」

せっかくなので、おかわりを頂きました。この感じは自家製だ。たまに堅いままのコーンも混ざってるのですが、それがまたいい。

椅子をよく見ると、高さが調整できるようになっていました。デザインもオシャレ。

「ここのカウンターは少し高いので、合う椅子があまりなくて。もし堅いという方が多ければクッションを置いたりということも考えてます。テレビでは野球を流してますが、大丈夫ですか? 私はサッカーが好きなんですが、それを強く打ち出すとサッカーに興味ない方は来づらいだろうし、あまりコンセプトを厳格に決めない方がいいかなぁと思いまして。そうですか。この辺りはご年配の方も多いですか。そういう方は入りづらいと感じるかもなぁ……」

まだオープンした初日。やっていく上でわかることもたくさんあるでしょう。何も今からあれこれ考えてもね。まだまだ先は長い。

なんとなく抱いていた飲食店をやるという夢を実現した店主。その表情は穏やかで、口調は柔らかく、人あたりがとてもいい。品があるし、懐の深さも感じさせます。料理も上手。本当に素敵な方だし、本当に素敵なお店だなぁ。

確かに飲食店には厳しい立地です。でも、徐々に人が集うようになって、長く続くといいですね。物腰が柔らかく、とても優しい方なので、特に女性が居心地いいと感じると思うんだよなぁ。近くにお住まいの方、一度のぞいてみてはいかがでしょうか。

Kitchen Bar 柿の木坂LOFT(ロフト)
東京都目黒区柿の木坂3-1-1 コムネット柿の木坂
月・水・金/12:00~14:00
月~土/18:00~24:00
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