MEAT JOURNEY 2018

Persie Distillery(パーシー・ディスティラリー)のクラフト・ジン「Persie Herby & Aromatic Gin」は、爽やかな香りと澄み切った味わいの間に揺れ動く~スコットランド・ジンのハーブの香りは1万キロ先へ

ある人の家でイギリス(スコットランド)の珍しいジンを飲ませてもらったら、それがとてもおいしかったんです。で、連れの友達(イギリス人)が日本にやって来るって言うので、ダメもとで「もしあったら買って来てもらってよ」とお願いしておきました。そうしたら、本当にどこかで見つけてお土産として持って来てくれました。

Persie Distillery(パーシー・ディスティラリー)の「Persie Herby & Aromatic Gin」。ディスティラリーは蒸留所という意味です。このジンの詳細や生まれた背景についてはまた後ほど。とても面白い話です。

ジンは大麦やライ麦、ジャガイモなどを原料とした蒸留酒です。植物の実や種など(ボタニカル(botanical)/草根木皮)で香り付けをするのが特徴です。ジン単体で飲んだことはなくとも、ジントニック、マティーニ、ギムレットなど、ジンを使ったカクテルは誰もが一度は口にしているんじゃないでしょうか。

私はジンも大好きです。何はともあれ、飲んでみましょう。

「吉田類の酒場放浪記」を見ながらロックで

ポンッと栓を抜いただけで、フワッと爽やかな香り。ショットグラスに注ぎ香りをかぐと、華やかでスパイシーな香りがアルコールとともに鼻腔を刺激します。

飲んでみると、少し不思議です。ハーブの爽やかで瑞々しい香りが強く鼻腔に抜けて行きますし、キック(強いアルコール感)もあるのですが、口内、特に舌はそこまで刺激されません。なんていうか、澄んでいるというか、透明で清涼な感じ。

ただ、香りと味がバラバラというわけでもありません。鼻と舌は近いし、つながっていますから、互い(香りと味)は互い(鼻と舌)と交感します。それはバランスがよく均衡が取れているというよりも、シーソーのよう。こっちが来たかと思うと、あっちが来て、どちらかが突出するわけではなく、両者の間で揺れ動くイメージ。

全般的にジンはそんな感じではあるのですが、「Persie Herby & Aromatic Gin」の場合は味わいがまろやかなので、香りが強い分、この揺れが一層引き立っている感じがします。そして、味を先に消失させながら、香りの余韻=フィニッシュはいつまでも続きます。

現地ではブラックペッパーを振って飲むのもポピュラーなんだとか。ピリッとした刺激が加わって、これもいいですね。

頂いたのはミニボトル

これまで味わったことのないような風味ですが、とてもおいしかったです。ジンってのもいろいろあって面白いなぁ。

Persieが生まれた背景~イギリスのクラフト・ジン

イギリスというとスコッチのイメージが強いと思いますが、実は”ジンの国”でもあります。

バーでよく目にするジン・ビーフィーター(BEEFEATER)。ビーフィーターとはイギリス近衛兵のことで、ボトルに描かれてるのがまさにそれ(※註1)。ビーフィーターのボトルはジンとイギリスの深い関わり合いを示しています。

参考サイト:BEEFEATER公式サイト:ビーフィーターとは

ビーフィーターはロンドン(イングランド)ですが、イギリスのジンの70%はスコットランドで生産されています。タンカレー(Tanqueray)もゴードン(Gordon’s)もスコットランドです。

ジンの長い歴史(※註2)については他所に譲るとしまして、近年のジンにおいては、2つの大きな出来事がありました。ボンベイサファイア(1988年)とヘンドリックス(1999年)の登場です。いずれも大きく注目を浴び、酒業界および消費者の間でジンが盛り上がります。

そして、2010年ごろからスコットランドを中心に、ジンを作るメーカーが激増します。2008年から2011年には5つの蒸留所がオープンしただけですが、2014年から2015年にかけてはなんと65もの蒸留所ができました。

蒸留所といっても、ほとんどはとても小さな蒸留所です。いわば”クラフト・ジン”といったところでしょうか。おのおのの流通量は少ないですが、個性的なジンがどんどん作られています。

というような状況の中、2014年に生まれたのが「Persie(パーシー)」です。

Persie Distilleryの創業者はサイモン・フェアクロー(Simon Fairclough)氏。同氏はもともとジョニーウォーカーやタリスカーなどのコンサルとしても働いていました。そんな同氏はいつか自分の蒸留所を操業させたいと思っていて、2013年、財産をなげうって、パースシャーにあった旧パーシー・ホテル(Persie Hotel)を買い取り、ここに蒸留所を作りました。

その後、Gin Club Scotlandという団体を設立したり、イギリス中のジン(150種以上)を飲み歩く旅に出たりするなど精力的に活動し、4000人のジン愛好家からのフィードバックを得ながら、奥さんと二人三脚で「Persie」を生み出しました。

参考サイト:Gin Foundry:Persie Gin

Persieの特徴

右のヒゲのかたがサイモン・フェアクロー氏。画像転載元:Persie公式サイト

多くのジンを飲んでいる中で、サイモン・フェアクロー氏は「これだ!」ということに気づきます。それは嗅覚・香りに関してです。

詳細は「Persie」公式サイトに譲りますが、人間が一番最初(なんなら胎内にいる時から)に発達させるのが嗅覚だそう。そして、フレーバー(Flavor:風味、香味)の75%は嗅覚に依存するのだとか。

確かに、「おいしい」とか「おいしくない」と感じるのは、味覚(舌)による味わいもさることながら、香り(鼻)が大きく影響していますよね。「納豆が嫌い」というのがその典型でしょう。

こうした事実から、同氏は香りを重視してジンを開発します。そして、できあがったのが3種の「Persie」です。

  • Zesty Citrus Gin
  • Herby & Aromatic Gin
  • Sweet & Nutty Old Tom Gin

それぞれは、ライムやオレンジの刺激的な香り、ハーブの香り、バニラやアーモンドのような甘くて芳醇な香りが特徴だそう。今回、私が飲んだのは「Herby & Aromatic Gin」です。

いずれのボトルにもこう書かれています。

WE NOSE OUR GIN

ある種のダジャレです(knows/nose)。ジンのことを知りつくした私たちが作ったジン。みなさん、ぜひこのジンの香りを楽しんで下さい。そんなメッセージが込められているのでしょう。

「Pesie Gin/パーシー ジン」でググッても、日本語で紹介されているサイトは皆無です。日本では流通していませんし、おそらく、イギリス内でも購入できるところは相当に限られているはず(通販はありますが)。

スコットランドと日本は、それはそれは遠く離れています。けど、スコットランドの片田舎にあるちっぽけな蒸留所で作られたジンの香りは、1万キロ先の日本・東京にもしっかりと届きました。しかも、2度も!

もし、どこかで「Persie」を見つけましたら、その可能性はとてつもなく低いのですが、だからこそ、奇跡的な出会いとも言えるでしょう。ぜひ試してみて下さい。

※註1:ビーフィーターの混同

画像転載元:The HUB

イギリス近衛兵にはいろいろあります。黒くて高い帽子をかぶった赤い服の兵士(コールドストリームガーズなど)が有名です。

画像転載元:Daily Mail Online

ビーフィーターの瓶に描かれているのはヨーマン・ウォーダーズというロンドン塔の衛兵隊です。2種のユニフォームがありますが、いずれもヨーマン・ウォーダーズです。黒っぽい方がカジュアル版で、赤と金のほうは女王を迎えたり、国事にあたる際に着ます。

画像転載元:Yeomen of the Queen’s Body Guard

君主を直接警護するヨーマン・オブ・ザ・ガードも見た目が似ています。

ヨーマン・オブ・ザ・ガードとヨーマン・ウォーダーズの見た目の違いは襷(たすき)です。ヨーマン・オブ・ザ・ガードは襷をしていますが(昔、銃を携帯していたことの名残)、ヨーマン・ウォーダーズは襷をしていません。ビーフィーターの瓶に描かれている兵は襷をしていませんから、ヨーマン・ウォーダーズです。

さて、ここからがややこしい。

本当はヨーマン・オブ・ザ・ガードがビーフィーターと呼ばれていました(beef-eater)。ところが、ヨーマン・オブ・ザ・ガードとヨーマン・ウォーダーズの見た目が似ているので、いつの間にか、ヨーマン・ウォーダーズもビーフィーターと呼ばれるようになります。

ですから、ビーフィーターの瓶にヨーマン・ウォーダーズが描かれているというのは、本来的にはおかしいのですが、このような”混同”が定着してしまった今となっては、そんなことを気にする人はほとんどいません。上のリンク先でもある「Yeomen of the Queen’s Body Guard」の中の人のように、ヨーマン・オブ・ザ・ガードであることに誇りを持っている人や、私のようにどうでもいい細かいことが気になる人以外はw

※註2:ジンの歴史あるいは「ジン」の語源

画像転載元/wikipedia:Juniper berry

日本語版ウィキペディアの「ジン」の内容は誤り(もしくは誤解させるような説明)が含まれています。特にオランダの医師・解剖学者であるフランシスクス・シルヴィウス(Franciscus Sylvius)がジン(あるいはその起源)を発明したという箇所。英語版ウィキペディアではこの点を明確に「誤り」と記しています。

なぜオランダからイギリスに? ジンを語る上で絶対に欠かせないジュニパーベリー(ジンの語源でもある)とは? そんなことがわかると、より一層、ジンを楽しめるんじゃないでしょうか。

詳細は下記サイトなどをご参照下さい。

wikipedia(英語版):Gin

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後藤ひろし(ひろぽん)

雑誌・書籍編集兼ライター、ウェブディレクター。主に学芸大学駅(学大)界隈で飲んでます。学芸大学で巡ったお店の数は約350軒。

https://twitter.com/gokky_510

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